弐ノ巻
輪廻
1
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
路に翔り去ろうと言う真澄の呟きに思えた。真澄の死は既に動かしがたい。
なぜなら真澄は生きることを望んではいない。死ぬことを、そして甦ることだけを一途に願っているのだから。
(今、これから生まれ出る、最も濃い血の者に、僕の魂が依りつくことを願って、死なせてほしい……。真秀ならできる…甦りを……)
「甦る…甦ってどうするの、真澄!?」
(きっと甦り、僕は必ず、真秀に逅う。次の世で逅えないのなら、その次の世で必ず、真秀の末裔に逅う。時を越えて必ず逅う。そのために幾度も甦る…佐保の甦りの血が潰えるまで……)
立っている真澄の身が、ぐらりと揺れた。
真秀はよろめきながら立ち上がり、周りを見渡した。燻って煙をあげている藪竹の繁みの中に、梓の強弓と矢一筋が落ちていた。熱に炙られ煤けてはいるが、確かに弓矢だった。
それを掴み取り、真秀はゆっくりと顔を巡らせて真澄に真向かった。
炎の中に立つ真澄が仄かに笑ったような気がした。煽られる炎の熱で、真澄の周りの風が歪み、真澄の面さえも歪んで見せているのだ。それはわかっていた。
それでも真澄が甦りを信じて笑っているように見えた。
真秀は嗚咽きながら、何かに背を押されるように矢をつがえた。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ