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戦国御伽草子
弐ノ巻
輪廻

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路に翔り去ろうと言う真澄の呟きに思えた。真澄の死は既に動かしがたい。
 なぜなら真澄は生きることを望んではいない。死ぬことを、そして(よみがえ)ることだけを一途に願っているのだから。
(今、これから生まれ出る、最も濃い血の者に、僕の魂が依りつくことを願って、死なせてほしい……。真秀ならできる…甦りを……)
「甦る…甦ってどうするの、真澄!?」
(きっと甦り、僕は必ず、真秀に()う。次の世で逅えないのなら、その次の世で必ず、真秀の末裔(すえ)に逅う。時を越えて必ず逅う。そのために幾度も甦る…佐保の甦りの血が潰えるまで……)
 立っている真澄の身が、ぐらりと揺れた。
 真秀はよろめきながら立ち上がり、周りを見渡した。(くすぶ)って煙をあげている藪竹の繁みの中に、梓の強弓(こわゆみ)と矢一筋が落ちていた。熱に炙られ煤けてはいるが、確かに弓矢だった。
 それを掴み取り、真秀はゆっくりと顔を巡らせて真澄に真向かった。
 炎の中に立つ真澄が仄かに笑ったような気がした。煽られる炎の熱で、真澄の周りの風が歪み、真澄の面さえも歪んで見せているのだ。それはわかっていた。
 それでも真澄が甦りを信じて笑っているように見えた。
 真秀は嗚咽(むせびな)きながら、何かに背を押されるように矢をつがえた。
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