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戦国御伽草子
弐ノ巻
輪廻

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しあてた。
「真澄、もっと話して。たくさん」
 真秀は夢見るように囁いた。
「あたしたち、もう、ふたりきりよ。佐保山が忌火(いわいび)で焼かれたら、すぐに佐保を出よう。そして真澄はずっと、目はものを見て、音を聞いて、あたしに話しかけてくれるの。霊力のすべてが潰えてもいい。必ず、そうする」















 そのあと、佐保彦が来た。もう真澄とふたりで佐保を去ることを決めていたから、最後にあたしは佐保彦と想いを通わせた。



 幸せだった。とても。



 けれど、共寝(ともね)から目が覚めると、真澄がいないのだ。何度呼びかけても返事がない。














 今眼前(いままなさき)(ひら)かれている幻影の全てを、彼は静かに受け止めようとした。
 だが、もう魂が凝らせない。真澄は木棺に寄りかかったまま片手で額を押さえた。今在る世界が砕け散る音を真澄は確かに聞いたと思った。砕けてしまった。なにもかも……。
 真秀は呼ばなかった、兄の名を。真秀は選んだのだ。(いつく)しむ唯一人の者を。
 それによって、私の選ぶ道は決まってしまった。いや、とうに決まっていたのだ。御影によって顕かにされた真言(まこと)を知ったときに。それより前、佐保彦が淡海に現れた、その時から既に兆はあったかもしれない……。











 真澄は燃え上がる炎の中にいた。



 自分の意思でそこにいるのだ。なぜ!?



『やつはおまえが欲しいんだ。同母の妹を恋した意沙穂(いさほ)の王子のように。おまえたちの祖父と同じように!』



 なぜなの真澄!



『だが掟を破って同母の妹姫と契り、その末に生まれた双子姫は、どんな運命を背負わなければならなかった!?その子どもたちは!?』



 あたしは、佐保彦が好き。佐保彦が愛おしい。憎まれても、恨まれていても、決して嫌いになることが出来なかった。



『真秀、これは運命だと思い切るしかない!真澄は死ぬことでしか、この運命から逃れられないんだ!』



 でも真澄、あたしは真澄も大事なのよ。真澄がいたから、御影と真澄がいたから、どんなに辛くても生きてこれた、のに…。











「やつは死ぬしかない。おまえがやつのものになれない限り、やつを死なせてやるしかないんだ、真秀。だれのせいでもない、同母の妹姫を恋した、やつの罪だ!」

















(死なせて欲しいんだ、真秀)
 魂を震わせるように伝わってくるのは、黄泉
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