弐ノ巻
輪廻
1
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
で結ばれているのだ。どの一族もそうだ。息長だってそうだ。
息長の女にも、他部族の男が密かに通ってくることがある。息長の男たちは内心、面白く思わない。
だが他部族の男でもいいと女が決めてしまえば、誰も口出しできない。やがて子が生まれる。
そうすれば、それは息長の子なのだ。決して、通ってくる男の一族には渡さない。子は、母なる部族に属するのだ。だから、和邇を父に持つ真若王も美知主も、息長の王子なのだ。父に繋がる和邇族ではない。
それは、神代の頃から定められた神々の掟だ。
聖らかなものも、卑しいものも、全ては母の血から伝わるのだ。
だから、御影が属した部族がありさえすれば、その一族はちゃんと認めてくれるだろう、真秀や真澄は同族だと。
息長の邑でヨソ者だと思い知らされる度に、真秀はいつも思っていた。御影の本当の一族がありさえすれば、と。
春日なる佐保は確かに御影の母族だった。
けれど、あたしの希望は粉々に潰えた。
佐保は、ヤマトの他のどの族よりも、神々の霊威に満ちた族だった。そのかわりに、同族としか逢わず、他族の血を嫌って生きのびてきた族だった。
御影はその、佐保の姫だった。
御影の母の加津戸売は、子を産むときに予言をしていた。
『私の今から産む児のうち、霊力の無い方は佐保を滅ぼす児を産む』
双子で生まれた児のうち、片方は予言どおりに霊力を持たなかった。それが御影だった。
御影の産んだ児、あたしと、真澄。
その強大な霊力で以って佐保を治める巫女姫に予言された、滅びの児だった。
佐保は御影を追放したのではなかった。殺そうとした。滅びの子の真澄を、産んだ罪によって。
真澄をも殺そうとした。滅びの子という理由で。
そして、一目見ただけのあたしをも憎むのだ。滅びの子だから。
その憎しみの松明を掲げて立ち塞がるのが、佐保の王子、佐保彦なのだ。あの、真澄にそっくりな王子、真澄の異母弟の王子が、あたしたちを憎んでいる……――。
何もかもが流れて行く。変わって行く。動いて行く。
確かなものは、憎まれているということ。“滅びの子”という、予言だけだと言うのか。あたしたちは、帰るべき古里を持たない忌まれ子、禍つ子なのか!?
ねぇ。
どうして、憎まれることがこんなにも
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ