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戦国御伽草子
弐ノ巻
輪廻

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で結ばれているのだ。どの一族もそうだ。息長だってそうだ。
 息長の女にも、他部族の男が密かに通ってくることがある。息長の男たちは内心、面白く思わない。
 だが他部族の男でもいいと女が決めてしまえば、誰も口出しできない。やがて子が生まれる。
 そうすれば、それは息長の子なのだ。決して、通ってくる男の一族には渡さない。子は、母なる部族に属するのだ。だから、和邇(わに)を父に持つ真若(まわか)王も美知主(みちのうし)も、息長の王子なのだ。父に繋がる和邇族ではない。
 それは、神代(かみよ)の頃から定められた神々の(おきて)だ。
 (きよ)らかなものも、卑しいものも、全ては母の血から伝わるのだ。
 だから、御影が属した部族がありさえすれば、その一族はちゃんと認めてくれるだろう、真秀や真澄は同族だと。
 息長の(ムラ)でヨソ者だと思い知らされる度に、真秀はいつも思っていた。御影の本当の一族がありさえすれば、と。












 春日(かすが)なる佐保は確かに御影の母族だった。



 けれど、あたしの希望は粉々に潰えた。



 佐保は、ヤマトの他のどの族よりも、神々の霊威(れいい)に満ちた族だった。そのかわりに、同族としか逢わず、他族の血を嫌って生きのびてきた族だった。



 御影はその、佐保の姫だった。



 御影の母の加津戸売(かつとめ)は、子を産むときに予言をしていた。



『私の今から産む児のうち、霊力の無い方は佐保を滅ぼす児を産む』



 双子で生まれた児のうち、片方は予言どおりに霊力を持たなかった。それが御影だった。



 御影の産んだ児、あたしと、真澄。



 その強大な霊力で()って佐保を治める巫女姫に予言された、滅びの児だった。










 佐保は御影を追放したのではなかった。殺そうとした。滅びの子の真澄を、産んだ罪によって。
 真澄をも殺そうとした。滅びの子という理由で。
 そして、一目見ただけのあたしをも憎むのだ。滅びの子だから。
 その憎しみの松明(まつ)を掲げて立ち塞がるのが、佐保の王子、佐保彦(さほひこ)なのだ。あの、真澄にそっくりな王子、真澄の異母弟の王子が、あたしたちを憎んでいる……――。
 何もかもが流れて行く。変わって行く。動いて行く。
 確かなものは、憎まれているということ。“滅びの子”という、予言だけだと言うのか。あたしたちは、帰るべき古里(ふるさと)を持たない忌まれ子、(まが)つ子なのか!?












 ねぇ。



 どうして、憎まれることがこんなにも
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