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『彼』とおまえとおれと

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頼ってくれればいいのに。この先、犀は辛いことや苦しいことがあっても日紅には全くそんな顔を見せず笑って隠そうとするのだろう。守られているだけなんて、日紅はそんなことを望んでいるわけじゃないのに。



 犀が日紅の事を大事にしていてくれているのと同じように日紅も犀を大事にしたいと思っているのに。たとえそれで傷つくことになってもいいのに。



 犀ひとりで背負わないで。



 日紅は口を開いたが、言葉は出てこなかった。かわりに左目からひとすじ涙が流れた。日紅を胸に抱きしめていた犀はそれに気付かなかった。



 日紅は否定の代わりに犀に顔を押しつけて首を振った。



「俺、ちょっと嬉しすぎて、てかおまえが…可愛すぎてちょっと突っ走りすぎたわ」



「はい、そこまで〜」



 突然間延びした声が二人に割り込んだ。



 犀がぱっと顔をあげる。日紅は聞こえてきた声にさっと赤くなった。



 そういえば、すっかり忘れていたけれど、ここは…!!



「家の前でいちゃつかないでくれるかな〜?ホレ、犀くん、送りオオカミになるには我が家にはまだ父も母もわたしもいますので一人暮らしをしてからにしてくださいね〜?父さんもう少しで帰ってくるしね。そんな熱烈な歓迎したら血圧あがって倒れちゃうわよ」



「あ、あああああの、はいっ!」



 二人は慌てて離れた。どこから見られていたんだろう、と考えるとますます顔が赤くなってくるのだった。
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