暁 〜小説投稿サイト〜
故郷は青き星
第二十三話
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30年の4月以降、ガソリン車は発売予定のカレンダーから姿を消し、ディーゼル車さえも日本などの先進国からは10年以内に姿を消すといわれている。
 各石油元売会社は一部直営店舗のガソリンスタンドでのガソリン・軽油・灯油の販売の継続を表明しているが、それ以外のガソリンスタンドでは今後3年以降の給油サービスの継続は不明となっているが、むしろ収益の主軸となりつつある充電サービスにリソースを集中できるので経営的には問題は無い。
 業界のみならず社会全体に影響を与えた、新型のバッテリーを搭載した車両は、出力・トルクでエンジン車に匹敵する性能を示し、航続距離も小型車で800km以上とガソリン車を凌ぎながらも軽量化と、EVの弱点とされていた点をほぼ解消する事に成功していた。
「はい、7月に発売されたモデルです」
「いいな。やっぱりこれからはEVですよね」
「そうですね。これからはEVが主流になるでしょうから、量産効果で補助金が無くてもガソリン車よりも安く発売されるようになりますよ」
「それにしても新型のバッテリーといいダイブギアといい、新しい技術がどんどん開発されてますよね。今度は核融合炉の原型炉が今年中に稼動って、世の中どうなってるんでしょうね?」
 核融合炉の開発の各段階は実験炉(2013年現在フランスで建設中)→実証炉→原型炉→商用炉となっていて、原型炉とは実質的な完成形ではあるが、今回の場合は実証炉を飛び越えての原型炉なので、原型炉完成後に実証試験を行い、問題が無ければ実際の送電網へ電気を供給してテストを行う。
「2・3日前には常温超伝導の実証試験に成功したと発表がありましたね」
「子供の頃に今世紀中に完成するかもしれないと言われていた未来の技術が次々に開発されるって凄いですよね」
 そう子供の頃のような目で語る芝山に運転手は微笑ましそうに笑顔で応える。


 目的地も知らされないままたどり着いたのは都内のホテルだった。
 ロイヤルパークホテル東京。3年前にオープンした外資系の最高級ホテルで、名前こそ知っていたがしがない大学生の芝山には縁の無い存在だった。
「ここって、1泊5万以上するんだよね?」
 縁の無いくせに、こういう事だけは知っている。
「そう承知しております」
「うわぁ〜〜〜〜っ」
 後部座席の窓から見上げる65階建ての高層タワーに見惚れながら感嘆の声を上げ、そして最後に「退くわ」と漏らす。
「何故!」
 運転手も思わず突っ込んだ。
 ちなみに運転手は外務省の人間であってニューワールド社の人間ではない。
 そもそもニューワールド社の社員とはエルシャンと交渉を持った各国の省庁からの僅かな出向者であり、運転手は外務省から臨時で借り出された職員に過ぎない。


 ニューワールド社によって貸し切られている59階まで
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