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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の3:一線 ※エロ注意
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、だよな・・・。ごめん、ケイタク。コーデリア様を裏切るような事を無理強いさせて」
「・・・俺も同罪です。最後は自分から、腰を振ってましたから」
「・・・ケイタク、仕方ない事だったんだ。事の原因は私にあるんだ。だって最初から、私が誘ったようなものだからな」
「最初から?」
「・・・ケイタクが戻る前に・・・自慰をしてたんだ。厠での声を聞いちゃって・・・我慢できなくなって」
「じ、じゃぁ、厠で聞いた足音って・・・貴女の?」
「・・・うん」

 汗ばんだ彼の顔が再び呆気に取られたように固まる。アリッサは気恥ずかしげに眉を顰めた。

「・・・ケイタク。幻滅したか?私がこんなに、いやらしい女だと知って」
「い、いいえ。寧ろ、その、意外な一面も見れた感じがして嬉しいような・・・」
「はっきり言えっ!恥ずかしいだろ・・・」
「嬉しいですよっ。アリッサさんの別の表情も見れて。・・・ほんとっ、我慢できなかったんです」
「・・・そっか・・・。ケイタク」
「はい?」
「・・・キスをする時のケイタクの瞳、好きだぞ」
「・・・」
「また、キスをしてくれるよな?二人っきりの時だけに」

 慧卓は何も言わず、彼女の唇をそっと奪った。安堵のような微笑を浮かべてアリッサは口付けの甘さを堪能する。唇を離すとアリッサは声を出して小さく笑い、慧卓の頭を引き寄せて額を合わせる。愛しそうに彼の髪を撫でながら、彼女はゆっくりと眠りへと就こうとする。
 幾分も経たぬ内に健やかな寝息を立て始めた彼女を見詰めながら、慧卓は後ろめたい気持ちをコーデリアに抱く。愛を誓っておきながら、半年も経たぬ内に不貞を働いてしまった。自らの思いはこの程度のものだったかという気持ちが、アリッサのあの媚態を前にしては仕方無かったという邪な気持ちと、あろう事か拮抗してしまう。決断を貫き通せぬ未熟さを痛感しながら、慧卓は現実から逃れるために、夢の世界へ逃げようとしていく。
 雨は未だ強いままであり、もしかするとこれは唯の通り雨ではないかもしれない。館が雨漏りするほど古びたものでないようにと祈りつつ、慧卓は夢路へと導かれていった。
 

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