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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の2:東のエルフ
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愛したりするのに理由なんて要らない。特別なきっかけというのも要らない。ただ一緒に生活を営んで、一緒に御飯を食べて、一緒に眠る。それが私が見つけ出した、最高で唯一の答えでしたわ。
 ・・・当時、私は今述べた事を申し上げて、夫を堕としたんですけどね。とても熱い夜になりましたわ」

 その時を思い出したか、妖艶さを醸し出す小さな笑みをソ=ギィは浮かべた。アリッサはソ=ギィの言葉を受けて、暫し言葉を控えた後、自信なく言う。

「そういうものなのでしょうか・・・私には、少し理解しかねます」
「まぁ、あの時の私は今のアリッサ様より年上でしたから、きっと考えも年寄りめいたものと言えますね。まだまだ御若い内はその御考えで宜しいかと思いますわ、アリッサ様。ですが殿方にとってはどうでしょうか。あのケイタクという御方、その手の御話には奥手な方なのでは?若しくは既に誰か意中の方がいらっしゃるとか」
「うぐぅ・・・」
「あら、矢張りそうなのですね。もしかしたら先程御話していた、『あの方』なのでしょうか?でもアリッサ様、例え誰であろうとも退いたら負けですわよ。身を退いてしまっては出るものも出ませんし、お情けを頂いた所で情けなさが胸を痛めつけるだけですから」
「だったらどうしたら・・・まだ気持ちの整理もついていないのに・・・」
「でしたらアリッサ様。御自身の気持ちを確認するために、このような策を取られると宜しいですわよ」

 にたりとした穏やかとは遠き笑みを浮かべてソ=ギィは近付き、アリッサの耳に囁く。その俄かに長い言葉を聴き、それが齎す状況を理解した途端、まるで大火のようにアリッサの顔は赤くなり、口がわなわなと震えた。

『えええええええええっっっっっ!?!?!?』
「・・・なんか、凄いのが聞こえましたけど」
「お気になさらず。主様は少し洒脱な所がありますので」
「そうですか・・・。いやぁ勿体無いなぁ」
「何がでしょうか」
「もう少し遅く歩いていたら、アリッサさんの面白い反応が見られたかなーと思いまして。いやぁ勿体無い」
「・・・貴方も中々、御好きな所があるようで」
「いえいえ、それほどでも」

 階段を登りながら慧卓はにやにやとした笑みを崩さない。優男のような顔に似合わず悪戯好きなのかもしれないと、チャイ=ギは心の端で思う。
 館の二階部分にある一室の前にてチャイ=ギは止まる。相も変わらず、外の雷は喧しいものであった。

「御部屋は此方となります。どうぞごゆるりと」
「有難う御座います・・・ん、丁度アリッサさんも来ましたね」

 とかとか、否、何故かどかどかとした速足でアリッサは駆け寄ってくる。顔は熟れた林檎のように赤らんでおり、慧卓を視界に捉えた瞬間彼女の目が見開かれ、視線がぶれた。普段とは打って変わった可愛らしき様にずきん
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