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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の2:東のエルフ
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!?」

 思わず溢れる大声。廊下を歩いていた慧卓が立ち止まって振り返るが、大方からかわれているのだろうと一人納得して再び歩き出す。
 室内に居たアリッサは、驚天動地といわんばかりにたじろぎ、首筋と耳を赤く色付かせていた。余りに素直な反応に、冗談の心算で声を掛けたソ=ギィの方も驚いている。

「驚きましたわ・・・ここまで図星とは」
「た、頼みますっ、ケイタク殿には言わないで戴きたいっ!あれに漏れてしまったら、私はっ・・・」
「え、ええ、分かっております。申し訳ありません、ここまで図星とは思いもよらなかったものでしたから。でも、そのように思い悩んでは御心が辛いのでは?」
「ま、まぁ・・・そうなのですけど・・・」
「・・・宜しかったら、私に御話していただけませんか?恋愛とは程遠き生活を送ってはいますが、それでも嘗てはそれに情熱を燈した身。御力になれると思いますわ」

 義務感にも似た好奇心が突き動かし、ソ=ギィにそのような言葉を述べさせた。而してアリッサはうじうじとして言葉を濁らせるだけである。外堀を埋めるようにソ=ギィは尋ねる。

「私がダメ、というのであれば、親しき御友人には御話なされたのですか?調停団には女性の方々もいらっしゃると、御噂から聴いております。同じ女である以上、其方の方々の方が頼りになると思うのですが」
「それは、それは駄目だっ。私の仲間にも親しき女性はいるのだが・・・一人はケイタク殿に恋を煩っているし、もう一人に告げたらからかわれてしまう・・・。そんなの、情けなくて言えません・・・」

 情けなき嗚呼という溜息を吐きながら、アリッサは己の口元を両手で隠す。見た感じ彼に恋しているのは明らかであるのに、どうして言いよどむのであろうか。ソ=ギィの疑問に答えるように彼女は呟く。

「・・・私とて、なぜ彼を想うだけで、こんなに胸が痛くなってしまうのか分からないのです。ケイタク殿が好きだからと言ってくれたのは、彼に恋慕の情を抱く友人でしたが、それを聞いても自覚がわかないのです」
「実感が湧かないという事でしょうか?」
「は、はい・・・。いきなり彼を好きだと考えるのが、少し急すぎて・・・。今まで未来が楽しみな後輩として見ていたのに、いきなり異性として見るというのは・・・」

 掌の隙間から赤く染まってきた頬が見え隠れし、目をキョロキョロとさせて視線の置き所に困っている。凛とした美貌に似合わず何といじらしき様か。同姓から見ても魅力的な彼女は、そのまま溜まりに溜まった内心を吐露する。

「も、もしですよ?もし私が本当に彼が好きなんだとして・・・それで楽になれるのなら、好きだと言ってしまいたいのです・・・。でも彼を好いた理由が分からないのですっ!長い間一緒に行動を共にして、語り合ったりしたのに・・・どうして・・・」
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