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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の2:東のエルフ
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を飲みながら駄弁る程度の軽いものだったのだが、街道での出来事に触れたとあっては、為政者としての厳しい態度が出ずにはいられないようであった。

「彼らの仕業らしきものが、此方に来る途中でも見当たりました。街道の傍に腐乱した死体が二つ、野晒しにされたままでした」
「・・・何と浅ましい。敵であろうと先ずは会話を求めるのが常識ですのに。これだから昔からの頭の固い連中というのは嫌いですわ。野蛮です。ああいうのは総て、磔刑にでも処すればいいんですのよ。私共はそうやって鼠を始末しているのですけどね」
「はい、主様。昨晩も厨房に紛れ込んでいた鼠を一匹、始末しております」
「あら、そうでしたの?御苦労様、お前の忠義には後で相応の報いを授けましょう。何時も通りにね」
「あり難き幸せであります」

 顔に似合わず物騒な事を言う婦人である。慧卓の視線にソ=ギィは直ぐに気付いて笑みを控えた。

「あら、御免なさい。内輪で盛り上がってしまって」
「それは宜しいのですが。それよりも・・・我等が此処まで参った意味、それを賢人殿は御理解いただいていると思います。つきましてはーーー」
「ええ。早速本題を話しましょう・・・と言いたい所ですけど、ここまでの道は長かったでしょうし、今日の事もあったから御疲れなのでは?御部屋を御用意させていただきましたから、其方でお休み下さいな。積もる御話は明日、御伺いします」
「そんな・・・私共は疲れてなど・・・」
「いいえ。ここはどうぞ、同じ女である私の御話をお聞き入れ下さい。余り無理をなさいますと御肌の艶が失われてしまいますわ。それでは意中の殿方に振り向いていただけませんわよ?」
「ま、まぁ・・・それもそうかもしれませんが・・・」

 ぐいぐいと押し込まれるように言われ、アリッサはしどろもどろとなる。時折意味有り気にちらと慧卓を見遣るが、慧卓は真意を探りかねて疑問符を浮かべる。
 
(・・・あら、これはもしかしたら・・・)

 それを見て勘付くものがあったのか、ソ=ギィは一瞬頬を軽く歪ませ、次の瞬間には先程までの押しの強い婦人の笑みを取り繕う。

「ですから、どうぞ今晩はお休み下さいませ。ね?」
「わ、分かりました。それでは御恩に預からせていただきたいと・・・ケイタク殿、行こうか」
「はい。それでは失礼致します」

 椅子に座っていた三人が立ち上がる。チャイ=ギィが先に出て、その慧卓が続いていった。

「調停官様、ちょっと・・・」
「?」

 慧卓の背が見えなくなっていくのを尻目に、アリッサは部屋に呼び止められた。ソ=ギィは確信めいたように瞳を笑わせて、そして単刀直入に言ってのけた。

「調停官様、あのケイタク殿という方を好いていらっしゃいますね?」
「なッッ!?な、なな、何を仰るのですかぁっ
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