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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の2:東のエルフ
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。彼らは何れも胴体に鉄の鎧をまとっており、それぞれ斑模様をしたバンダナを頸元に巻いている。この統一性は先の者達とは決定的に違う。賊徒ではないと、直感で理解できた。

「・・・我等は王国北嶺調停団だ。賢人の方々へ御目通り適うためにタイガの森より参ってきたが、途中賊徒等の襲撃に遭い、この場にて切伏せた。貴殿らは何処の部隊の者だ?指揮官はどこにいる?」
「ここに」

 凛とした声が耳を打つ。武器の構えが解かれて、穂先が天を向いた。一本の大樹の方から、灰色に澱んだ外套で身を包んだエルフが現れる。目深にフードを被っているため表情は窺い知れないが、桜色をした小さな唇より、それが女性のものであると理解できた。 

「・・・女、か」
「御初に御目に掛かります。賢人ソ=ギィ様の私兵団団長であります、チャイ=ギィです」

 フードを取って、女は軽く一礼をした。砂色の瞳と髪をした怜悧な風貌の女性である。慧卓は剣筋にこびり付いた血肉を拭いながら、暗澹と変じてきた空模様に気付く。遥か遠くの山々では光の稲が落とされている頃合だろう。



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 ごろごろと、腹の収まりに悪そうな音が宙を裂いて響いてきた。そして数瞬遅れてやってきた音は、まるで天の地震が如きものであり、思わずびくりと目を向けてしまった。屋内でこれである。屋外にいればさぞや肩を萎縮してしまいそうなものになっているだろう。

「そのような災難に遭われていたとは・・・心中御察しします」
「いえ、お構いなく。このような荒事には幾分か慣れておりますので。・・・今更お尋ね致しますが、あの者達を切伏せてしまってよかったのでしょうか?。貴方々の村人と、同じような服装をしていたのですが」
「ええ、構いませんわ。何せ彼らは、私共と敵対する村の者達だと分かりましたので。出稼ぎに盗賊になって街道に伏せていたようですけど、それが運の尽きらしいですわね。調停官殿の御活躍もあって、私共は街道を守る大義を得ました。御礼を申し上げます」

 直ぐ傍で続けられる会話に、慧卓は意識を向けた。招かれた館の一室にてアリッサが茶を楽しみながら、対面の椅子に座る温厚そうな顔立ちの婦人と向き合っていた。傍に控える黙してチャイ=ギィと同色の目と髪をした女性だ。丁寧に編み込まれた緩やかな衣服と和みのある微笑が似合う女性であり、事前の説明なくば、彼女が賢人ソ=ギィであるとは思いもよらなかった。燭台に燈された蝋燭の明かりが、二人の女性の微笑を明るくさせていた。
 伝令兵の報告を受けて林まで駆けつけてくれたチャイ=ギィの案内により、雷雨の厚い雲が追いつく前に慧卓らは村に辿り着く事が出来た。そしてそのまま領主の館にて、こうやって会談の場を設けてもらったという訳である。実際のところ、その会談は御茶
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