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王道を走れば:幻想にて
第四章、その6の2:東のエルフ
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まるで運命の如く心臓を刺激していただろう。その事実が否応無く感じられて、会話はぎこちなく始まった。

「お、俺等、王都から出立してどんぐらい経ちましたっけ?」
「そうだな・・・夏の真ん中くらいに出てから・・・かれこれ二月だな」
「そうですか・・・意外と経っているんですね」
「光陰矢のごとしだ、気付いたら冬になってしまうかもしれん・・・」
「なら、あのふかふかの毛皮のコートも必要になってきますね。実は着るのがちょっと愉しみだったりするんですよ」
「なるべく質のいい物を要求しておこう。悪いものだと毛が整ってなくて、肌がちくちく感じてしまうからな」
「ええ。是非、お願いします」
「・・・しかし、二ヶ月か。王都の方ではどうなっている事やら」
「確か、軍事演習があるって聞いてましたけど」
「ああ。王都周辺の街と協力して行われるのだ。何分我が軍は人員が少ないからな。数を増すのに必死になるのだ。王都からは正規兵だけが送られる予定だが、他の街ではそうはいかんだろう」
「というと、その日のためだけに傭兵が雇われたり?」
「一部ではあるかもしれんが、もっと確実なのは私兵だったり、それか出稼ぎに来た者達を雇う事だな。食糧と給与さえ確保さえすれば、数合わせにはなる」
「そんな貧乏くさい・・・」
「失礼な。倹約的だと言ってもらいたい。必要な時に、必要なだけ物資を使用する。それが軍隊でもあり、組織でもある。決して貧乏なのを見透かされたくないからという指摘は当てはまらんからな!」
「十分意識している時点で、ほとんど決まっているようなものですけど・・・ぃいぃ痛いっ!!抓んないで下さいっ!!」

 手首の直ぐ上辺りを抓られて慧卓は小さく悲鳴を漏らす。そして会話の中で出てきた王都という言葉から、ある一つの事を尋ねてみた。

「演習には、王女様も出るんですか?」
「そう、だが・・・」
「・・・・・・はぁ、まだ後半年かぁ」

 アリッサはそれを聞いて、胸が再び痛むのを感じた。その痛みに操られるかのように、彼女の口は彼女自身の意思とは反対に、気掛かりであった事を尋ねてしまった。

「・・・ケイタク殿」
「・・・はい」
「王女様の事が好き、なんだよな?」
「・・・はい。好きです。一人の女性として、意識しています」
「・・・・・・何か、切欠というのはあったのか?」
「はぁ、切欠ですか・・・。切欠らしい切欠というのは、あれですかね・・・『ロプスマ』の御祭りで、デートした時に見せた、彼女の笑顔かな」
「・・・笑顔?」
「ええ。あっ、王女としての笑顔も綺麗で、俺はあれも好きですよ?でもあの時に見せてくれたあの可愛い笑顔。一人の女の子として溌剌に見せてくれた表情に、なんといったらいいんですか・・・胸がどきっとしちゃって・・・その、今に至ります」

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