第四章、その6の2:東のエルフ
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れによって柳腰の影が壁に映されるのを、慧卓は息を呑んで見詰めていた。
「も、もういいぞ・・・。ケイタク殿も着替えたらいい」
「は、はいっ・・・分かりました」
布団の中に、もぞもぞと潜り込んでいく音が聞こえた。慧卓は寝台から立ち上がって着替えを始める。寝巻きは王都でも着たような軽く、柔らかみのある絹のものであり、色は上下とも白である。慧卓は脚絆からそそくさと着替え終わると、上着を脱いで一息吐く。
布団に潜り込んでいたアリッサはひょこっと顔を出し、慧卓の背中をちらと見やった。
(う、うわぁ・・・結構鍛えてる・・・)
撫で肩は俄かに盛り上がり、肩甲骨の部分は筋肉の膨らみが見て取れる。腰もまたきゅっと締められており、過度な筋肉はついてないように思えた。年齢とは裏腹に中々に立派な体躯である。意中と諭された男の上半身を見詰めていると、何故だか胸が高鳴るのをアリッサは感じた。
慧卓は上の寝巻きを着ると、一瞬躊躇いながらも王女から渡された指輪を外して衣服の間へ仕舞い、布団の中へ身体を入れようとする。そして、気恥ずかしそうにアリッサを見遣った。
「あ、あの・・・ちょっと詰めてもらえますか?俺も寝たいんで」
「あ、あああっ、すまないっ、今どくからなっ!別に照れてた訳じゃないんだぞ!?分かっているな!」
「はい、はいっ。分かっています・・・」
互いに一つしかない枕の端っこの方に頭を置き、同じ布団を被る。しかしそれでも手を横に広げようとすれば、直ぐに相手の手の甲に指が触れてしまう。やけに短き距離であり、息遣いすら聞こえてくるかもしれない。
「で、では、お休み」
「はい、お休みです・・・」
二人は互いに目を閉じて睡眠状態に落ちる事に意識を傾ける。心臓の音と落雷の光。それだけが二人を包み込む筈であった。
(寝れる訳が無いだろう・・・)
だが眠りに就ける筈も無い。特にアリッサはそうである。強引な成行きとはいえ同じ枕を共にするとあってか、先程から頬の熱が抜けきっていないのだ。手で触れずとも分かる顔の赤らみであり、暗闇でなくば慧卓に看破されていたであろう。
アリッサはちらりと目を開けて相手を見遣る。慧卓は眉を顰めて眠りに集中しようとしており、却って己の眠気を阻害しているようにも見えた。アリッサは上擦りかけた声で言う。
「け、ケイタク殿っ。実はだなァっ、中々眠気が到来せんのだっ。よければ寝るまで話をせんか?」
「いいですねっ。じゃぁ、早速何から話しましょうかっ?」
「うむ、そうだな・・・・・・・・・」
「・・・・・・俺から話しましょうか?」
「す、すまん、頼む」
暗い室内の中、二人の小声はよく響く。屋外の雷の響きが無ければ、或いはぽつりぽつりと降って来た雨の響きが無ければ、その小声は
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