第一章 グレンダン編
天剣授受者
天剣授受者選定式
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コと作り笑い全開で売るが、見た目美少女のシキならあら不思議、ドンドンバックの中の物が売れていく。誰でも、満面の笑みを美少女からされれば気分が良くなるだろう。ならない奴は、女性恐怖症か、アッチの方々だけだろう。
売れていく様を見て、シキはほくそ笑む。水は化錬剄で限界まで濾過した水であり、お菓子は自作であるがちゃんと元となったお菓子を参考に作っている。孤児院では大好評のものなので味に問題はない。
偽装? 虚偽? んなもんクソくらえと言わんばかりに、ものの十分程度で売り切れてしまった。全て健全に使うからと心の中で平謝りしながら、シキは作り笑いを観客全員に振りまく。
「おお! あの子可愛いなぁ」
「あんなに小さいのによく頑張ってる」
「幼女来たこれ!」
「いいわねー、あの子……お持ち帰りしたい」
何やらおかしなコメントをしている人たちがいたが全力で無視して、シキは観客席を離れる。そろそろ戻らないと、問答無用で棄権になってしまう。
気持ち急いで控え室まで戻ると、シキは視線を一点に受ける。
控え室にはシキとレイフォンも入れて十六人の武芸者が緊張した面持ちで、各々出来ることしていた。
レイフォンは目を閉じながら、気持ちを高めている。さすがのシキも茶化す気にはなれずに稼いだお金を個人用のロッカーに収める。このロッカーは武芸者でも壊せないように設計されているので安心である。
そうしてロッカーに荷物を入れて、ため息をついたシキはこちらを凝視する視線を感じた。その方向を見ると、シキを軽んじた目で見ている一人の武芸者がいた。
顔にはナナメの切り傷が残っており、見るからに中堅武芸者風である。切り傷くらい、今の医療なら消せるはずだがと疑問に思ったシキだが、口には出さない。威圧をする意味もあるのだろうし、もしかしたらリヴァースとカウンティアのように恋人に傷つけられた傷ではないかと思ってしまう。あの二人が師匠になってから、合間合間に繰り返し言われたので、こういう傷を見るとその話を思い出すのだ。
「随分と余裕に見える」
「……ほぇ?」
シキはリヴァースとカウンティアの話を思い出した、ついでに師匠たちのシゴキを思い出していたため反応に遅れた。おかげで間抜けな声を出してしまった。
シキは頭を抱えて羞恥を耐える。周りの武芸者たちもその様子を微笑ましく見ていたが、シキに話しかけてきた男は表情を固くしたまま言う。
「君のような子供がここにいるとは……天剣授受者の実力も落ちたものだな」
「ふーん」
挑発ともとれる言葉を、シキはスルーした。
確かに師匠である天剣を馬鹿にされたことは憤りを感じないわけではない。だが、その男を見て興味を失った。
実力はあるだろう、しかし剄の量が絶望的に足りていない。だからこそ、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
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