第一章 グレンダン編
天剣授受者
天剣授受者選定式
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グレンダンにとって、女王とは象徴的存在でしかない。
なぜなら一般市民には顔を出さないからだ。見たとしても顔を布で隠し、素顔を見せないようにしている。
分かっていることは、代々グレンダンを治めている由緒正しき武芸の家の者、武芸者としては最強であり、その実力は天剣授受者を凌駕する、楽しい事好きな変わり者だけである。
一般人のほとんどは女王に敬意を払うべきだと考えているが、天剣よりも強いと言われれば首を傾げるしかない。彼らがもっとも強いと認識しているのが天剣だと認識しているせいでもあり、実際に女王が戦った場面など見たことがないのだ。
それでいて強い強いなどと言われてもイマイチ想像できないし、王家が権威を保持するために流しているデマだというのが共通の考え方だ。
それを王家は否定もしないし、肯定もしない。ただ静観するだけである。
だが、民衆は知らない。グレンダンの王家に宿命づけられた運命も、自分たちの都市が騒乱の中心になるなど、今はまだ知らない。
リーリンは張り切って昼食の準備をしていた。
いつもならシキが全部やるのだが、今日はシキはいない。朝早く出かけてしまった。そう今日は天剣授受者選定式。
周りではまだ小さい子供達が騒ぎながら、出かける準備をしていた。デルクはもう準備を終わらせたのか、椅子に座りながら危なっかしい子供たちの様子を見ていた。表情が硬いが、子供たちが怪我しないかヒヤヒヤしていることはリーリンを含め、年長者の孤児たちには丸分かりだった。
ワイワイと楽しそうにしている子供達、それもそのはずだ。皆、レイフォンとシキの戦いを楽しみにしていた。
孤児院の子供たちからすれば、シキもレイフォンも娯楽作品から出てきたヒーローそのもだ。誰もが二人の活躍を期待している。
そう思うと、リーリンはため息をついてしまう。
数年前のシキの評価を思い出したからだ。あの頃は一人泣きながら、リーリンと寝ていたものだ。今ではすっかり生意気になってしまったが。
「まったく……」
「ごめんね、リーリン。今すぐにでも行きたいはずなのに」
一人の年長者が言うと周りも軽く謝る。
リーリンは手を振って気にしていないとジェスチャーするが、内心では早く行きたいと思っている。弟と好きな人の戦いだ、今すぐにでも行きたいのが本音だ。
だが、リーリンの生真面目な性格がそれに待ったをかける。
「にしても、あの二人がねぇ」
「凄いですよね」
武芸者でないリーリンでもそれは同意できる。グレンダンの武芸者たちが目指す最高位の称号、天剣授受者。その選定式に出れるだけでも凄いのだ。それも十歳、並大抵では出来ない。
それが身内から出たというのだから、この孤児院もそうだが、サイハーデン流にとっては最高の誉れだ。
外からは断続的に花火が
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