第十章 (1)
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僕のものなのか…!
少し後ろに回って、ちょっと大きいかな…と思っていた尻を、ひたすら「僕のものフィルタ」で凝視する。…か、格別だ!「僕のもの」と思うだけで、この世に二つとない黄金率を持つヒップラインにしか見えない!
…思い切って、斜め30度くらいから、元々僕好みの唇を覗き込んでみる。オレンジかかったピンク色の唇が、白い息が零れる。これも…っていうかこれこそ、僕のものか…!
…だ、大丈夫だよな。今度こそ、間違ってないよな。
これはもう、付き合ってると言っても差し支えない段階だよな…!?
それなら、あのオムライスの件も簡単に説明がつく。…あれは柚木からの、ラブレター的な意味合いをもつものだったんだ…かかっていたケチャップが、3歳児が書くハートマークみたいだったような気がしないでもない!
…柚木の気持ちに応えるためには、まず僕の合鍵を渡そう。僕とお揃いのストラップをつけて。僕としてはサークルの皆に公表することもやぶさかではないが、柚木が『…でも私、恥ずかしい…姶良と毎日“あんなこと”してるって、皆に分かっちゃうよ…』と頬を染めるのならば、残り3年間、意地でも隠し通そうじゃないか!結婚は…そうだな、さすがにお互い自立してからにしよう。…しかし柚木がどうしても『卒業までなんて、待てないよ…』と涙ぐむのならば、学生結婚も辞さない構えで事に当たろうと思う!さあ柚木、こっちの準備は万端だ。僕の胸へ飛び込んでおいで!!
「…ちょっと。さっきから変な角度でついてこないでよ」
柚木が険のある口調で言った。
「なんか、落ち着かないんだけど」
「そ…そうだよね。ごめん」
さりげなく柚木の斜め後ろに回り込み、肩に手を伸ばす。
「…そっちは大分、落ち着いたみたいだね」
指先が肩に触れる直前、柚木の声に弾かれた。
「どうせ何言っても、姶良は『考える』のを止めないから」
……え
「そういう性分なんでしょ。…だったら、他に『考えるネタ』をくれてやればいいって思ったの。それだけ」
天気の話でもするように表情を変えずに言うと、僕の眼を覗き込んだ。
「…色々、考えちゃったでしょ」
……ええ、考えちゃいましたとも。
8年後に一男一女をもうけて、後楽園で笑いさんざめきながら長男を肩車してるところまでね……危うく長男の名前とか呼んじゃうとこでしたよ……
正直、君の前じゃなければ崩れ落ちてるところです……
すとん、と腕を体の横に落とし、くたり、と首を傾ける。『僕のものフィルタ』は、柚木の思いがけない発言に、あえなく砕け散った。…フィルタが砕けた今でも、やっぱり唇は腹が立つくらいに僕好みだ。
「――意外」
「なにが」
「柚木、そういうこと、誰にでも出来るんだ」
ちょっと皮肉を込めて言ってやった。すぐ怒り出すなと思っていたら、意外に
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