第十章 (1)
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は」
――ごぉおぉぉおおぉぉおん、ごぉおぉぉおおぉぉおん、ごぉおぉぉおおぉぉおん
「信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、信じない、」
――ごぉおぉぉおおぉぉおん、ごぉおぉぉおおぉぉおん、ごぉおぉぉおおぉぉおん
「信じてたまるか!!」
――ごぉおぉぉおおぉぉおん……
…『体温』を感じた。そう思った瞬間、白い靄がゆるゆると薄らいでいった。薄い靄の向こうに、閉じた長いまつげが見えた。うあ、と声を出そうとして、気がついた。
僕の声は、柔らかい唇に塞がれていた。
首の後ろに回された手のひらが冷たい。首筋から、コロンの香りがする。ここは、病院の廊下…麻痺した感覚が解きほぐされ、一つ一つ認識していくにつれて、心臓が暴れ馬の足音みたいに轟く。…僕は、僕たちは何をしているんだ…?
とりあえず腰に手を回してみるか…と手を伸ばした瞬間、細い腰がすっと後ろに下がった。呆然とするしかない僕の目の前には、いつも通りの柚木がいた。
「…手間、かけさせるんじゃないわよ」
そう言い捨てて、僕の脇を通り過ぎた。すれ違う瞬間、僕の手を取って。
「あ…」
僕は引かれるままに、柚木の後を追った。靄は晴れたのに頭がふわふわして、何か考えようとすると思考にノイズが走って千々に乱れる。…ねえ、さっきのあれはどういうことで、僕をどこに連れて行く気なんだ、柚木…
やがて、トイレの前で柚木の足が止まり、するりと手が解けた。…ど、どういうことだ。まさか柚木…続きは、個室で…!?
「そ、そんな初めてなのに大胆な!!」
「馬鹿なこと言うなっ!!」
いい裏拳をもらい、ぐらりと体が傾いだ。…鼻が痛い。
「姶良、トイレに行くって言ってたじゃん!」
「へ……?」
そういえば、そんな口実で逃げてきたっけ。
「私も行こうと思ったのに、道が分からなくなって…姶良の声を辿って来たの!」
「ま、まじで?迷ったの!?…右、左、右、左だよ!?」
「えっと…途中何回曲がったか、自信なくなって…」
「と、トリだ…トリがいる!」
「…うるさいっ!いい、私が出るまで外で待っててよ!」
そう言い捨てて、柚木は引き戸を閉めてしまった。
…柚木、君はもう少し、考えたり振り返ったりした方がいいんじゃないか…
柚木の斜め45度後ろから、柚木のクセ毛が揺れるのを眺める。ただ眺めるんじゃなくて「僕のもの」という前提で、ひたすら眺める。名づけて「僕のものフィルタ」。
少し赤い『くるん』と巻いた髪が、ばら色の頬にふわりとかかって、とても可愛く見えてくる。…おぉ、この、サークル内でもちょっと評判の『くるん』が
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