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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
第十五話「流転」
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プから口を離した。


「っとと……、急に叩くのやめてくださいよ。ところで及川先生、髪切りましたか? それに化粧もいつもと違うような」


「あっ、分かる? ちょっと切っただけなのにすぐ分かるなんて、流石は千夜君ね! ねえねえ、どうかしら?」


 及川先生の前髪は以前に比べて少し短くなっていた。指摘されないと分からないくらい微々たるものだが、いつも目にしているのだからこのくらいの差異は分かって当然だ。


 嬉しそうに顔を綻ばせる及川先生に俺も微笑み返す。


「ええ、よく似合ってますよ」


「きゃー! 似合ってるって言われちゃった! もう、だから千夜君って大好きっ!」


 花のように可憐な笑顔で抱きついてくる及川先生を宥めつつ、この喧騒のなか眠りこけるハクに早く起きてくれと思わずにはいられなかった。


 ――先生の熱意に押し負けそうだよ……。





   †                    †                    †





 午前の授業を終えて昼食時間。


 この学園には大食堂があり、全校生徒を収容できるほどのスペースを誇る。


 コックである料理長は料理にすべてを捧げた変わり者の妖怪である。提供するのは人間界の料理である和洋中であり、大抵の料理はここで食べられる。しかも値段も手頃だ。


 しかし、人間の料理を好む妖怪はあまり多くない。そのため大食堂で食事をする生徒はいつも三分の一程度だ。


 昼食になると職員の先生方はこの大食堂を利用、もしくは自前の弁当を持参してくる。俺はその日の気分によって食堂か弁当かを決める。


 今日は食堂にしよう。ハクを肩に乗せて席を立つと、及川先生が声を掛けてきた。


「千夜君はお昼どうするの?」


「今日は大食堂にしようかと」


「そうなの……あ、あのねっ! 千夜君のお弁当も作ってみたんだけど、よかったらどうかしら?」


 頬を紅潮させて後ろ手に持っていた小さな包みを差し出す。ピンク色の布で覆われたそれはどうやらお弁当らしい。


 鼻をひくつかせた愛狐が物欲しそうな目で見上げてきた。


「いいんですか?」


「うん。ちょっと多く作り過ぎちゃったから、千夜君の分もと思って」


 もじもじしながらチラッチラッ、と上目遣いで見上げてくる。頂けるのなら断る理由は無い。それに及川先生の料理の腕前は信頼できるからな。


 喜んで申し出を受けようとしたが、


「須藤先生〜、青野君からお話があるみたいですよ〜?」


 猫目先生の声に振り返ってみると、落ち着かない様子でそわそわしている青野が職員室の入口に立
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