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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
第十五話「流転」
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がマシか。片や三大冥王の一人であり学園の理事長で、片やバスの運転手だからな。


 名前も身元も分からないヒト。バスの運転手で男性、それと葉巻が好きという点しか解明あれていない。押し殺された妖気から妖怪だと分かるが、何の妖怪までかは推測もできない。


 色で例えると前が見えないくらい凝縮された漆黒の闇のような妖気。この妖気の質と濃度からして恐らく大妖だと思うが。


「ヒヒ……相変わらず懐かれてるねぇ。だけど油断しちゃいかんよ。なにせ妖怪学園は恐ろしいところだからなねぇ」


 肩を震わせて陰鬱な笑い声をあげる運転手にハクの白い毛を逆立つ。宥めるように優しく背中を撫でると、落ち着いたのか逆立った毛が元に戻った。


「まあ大丈夫ですよ。こう見えてハクは強いですからちゃんと自衛できますし、俺もついていますから」


「ヒヒヒ、確かに青年がいれば安心だね。なにせ裏の世界を震撼させたあの『殲滅鬼』が保護者なのだから」


「そこまで大層なものではありませんけど」


「謙遜も度が過ぎれば嫌味に聞こえるぞ? 受けた依頼の達成率は百パーセント。しかもかの真祖を葬った君はちょっとした伝説扱いだ。とはいっても、アルカードを知る者の間だけだがね」


「そうです、千夜はすごいのですから自信を持ってください」


 なぜかハクまでもが便乗してつぶらな瞳で俺を見上げてくる。どこか気恥ずかしさを覚えた俺はわしわしと乱雑に子狐の頭を撫でた。


「わぷっ、何をするんですか!」


 ちょっと聞いているんですかー! という声を右から左へ聞き流す。しかし、相変わらず滑らかな触り心地だな。四六時中撫でていても飽きないだろう。


 魔性とはこのことか、と馬鹿なことを考えていると、がぶっと手を噛まれた。甘噛みのため痛みは全くない。ハムハムと手を噛み続けるハクをコロンと仰向けに転がして、その柔らかなお腹を擽る。


「きゃっ、ちょ、ちょっと千夜! あは、あははははっ! そ、そこはやめてって……! はははははっ! ダメだって……いってるでしょう!」


「うおっ」


 小さな火の玉が目の前で灯り、思わず手を引いてしまう。荒い呼吸を繰り返していたハクがキッと眦を吊り上げた。


「まったく……急に乙女のお腹を触るなんて、千夜はデリカシーがないです」


「乙女?」


「……なんですか?」


 ジロッと怖い目で見上げてくるハクさんに「いえ、なにも」と返しつつ視線を切る。


 乙女をからかってはいけない、どうやらこれは種族の壁を越えた共通認識らしい。


「ヒヒヒ……仲がよくて羨ましいことだ。ところで青年、新入生が今年入学したのだろう? どうだね、彼らは」

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