第三次篇最終部第一幕 取り戻された絆
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「ああ」
宙の後ろからの問いに答えた。
「そのつもりだ」
「そうか、ならだ」
「言っていいんだな」
「何があっても行くつもりだろう?」
こう言って微笑みさえする宙だった。
「今の御前は」
「済まない」
彼のその言葉を受けてであった。
「今からな」
「なら今から行くんだ」
「行って来る」
意を決した顔でクレバスの中に飛び込んだ。その中は凍て付いた岩場であった。その中に入るとである。マーグはその下に横たわっていた。
頭から血を流している。しかしそれでもだった。息はあった。
「兄さん、生きているのか」
それは確かだった。しかしであった。
「俺のことはどうしても覚えていないのか」
そのことを思ってだ。悲しみがこみ上げてくるのを抑えられなかった。それでその顔を苦渋に満ちたものにさせているとであった。
「どうしてだ、それは」
「う・・・・・・」
そしてであった。マーグが目を覚ましてきた。
「兄さん、また目が覚めたら」
「マーズ・・・・・・」
ここで彼は言ってきた。
「マーズなのか」
「マーズ!?」
「覚えている」
上体を起こしながら言ってきたのだった。
「私を何度も助けようとしてくれたな」
「覚えていたのか、そのことを」
「そうだ、覚えている」
そうだというのである。
「私は今まで」
「まさかとは思うけれど」
「レツィーラ」
不意にこの名前を出してきたのである。
「レツィーラ=トーラーによって」
「トーラー!?誰なんだそれは」
「バルマー帝国の祭司長」
こう語る。
「十二支族トーラー家の女当主でもある」
「トーラー!?そういえば」
タケルはその話を聞いてだ。あることを思い出した。
「レビもまた」
「レビ。レビ=トーラーか」
「あの娘のことを知ってるのか」
「知っている」
彼女もだというのだった。
「レツィーラによって洗脳されてだ。私と同じように」
「バルマー戦役では洗脳されて地球側と戦っていたと聞いていたが」
「そういうことだ。そして私も」
「兄さんも」
「洗脳されていた。だが」
しかしここで言うのだった。
「私はそれでも。御前と」
「それはいいんだ」
タケルは微笑んでマーグに対して告げた。
「いいんだよ、それは」
「私を許してくれるのか」
「許すも何も」
そういう問題ではないというのである。
「この世でたった二人きりの兄弟じゃないか」
「兄弟・・・・・・」
「そう、俺達は兄弟じゃないか」
またこのことを兄に告げるのだった。
「それでどうして」
「兄弟か」
「これからどうするんだい?」
今度はこう兄に問うた。
「これからは」
「決めている」
こう弟に答えるマーグだった。
「私も御前と共に」
「俺と共に」
「バルマーと戦お
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