弐ノ巻
霊力
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まで十分可愛いから、痩せようなどと考えなくてもいいんだよ」
「かわっ…」
兄上がモテるのはこういうことを自然に言っちゃうからよね。しかも性質が悪いのは、本人は全くそんな気がないところよ。本当に女泣かせで手間がかかる兄上なんだから!
「そんなの誰にでも言っちゃダメよ」
あたしは顰めっ面で兄上に言ったけど、兄上にはまるで暖簾に腕押し、糠に釘。全く分かっているのか、いないのか…。
「瑠螺蔚にしか言わないよ」
「だっ、から!そういうところが…」
「瑠螺蔚にしか言わない。問題ないだろう?」
兄上はにっこり笑った。
確かに、恋愛対象外の妹にしか言わないなら問題、ない、けど…。ん?問題ないのかしら…なんか丸め込まれているような。
昔から兄上に口で勝てた例なんかない。
「みんなに『キミだけが特別だよ』って言っているのは悪い男だからね!」
「だから、私は瑠螺蔚にしか言っていないと言うに」
兄上は楽しそうに声をあげて笑った。
あたしはそこでやっとほっとした。兄上は生きてる。よかった。生きてここにいる。
あたしはずりずりと兄上に寄ると、ぺたんと横からくっついた。
「どうしたの」
兄上は小さい頃のように、片手であたしの頭を撫でながら優しく聞いた。
「兄上…死なないでね」
あたしはぽつりと言った。
「姉上様も、義母上も、父上もみんな大切だけど、兄上も自分を大事にしてね。霊力があったって、何だって、兄上はあたしの大事な兄上なんだから。死なないでね」
兄上はあたしを見ると、柔らかく微笑んだ。
「死なないよ」
あの悲しい夢を見始めてからいつも気持ちの奥底に何かに対しての不安があるみたいだった。
何か、とても大切なものを失ってしまうような、確信のような予感が。
兄上がいきなり顔をあげた。
その体が緊張で強張るのがわかった。
え?
あたしは訳も分からずに兄上を見上げた。兄上は瞬きもせず空を見ていた。けれど、その目は確かに何かを捉えているようだった。
霊力。また、霊力。命を削っているのではないの?こんな弱った状態なのに、一体何のために霊力を費やしているの。
「瑠螺蔚」
なにかを視ていると思っていた兄上は、唐突に声をあげた。
「なに
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