弐ノ巻
霊力
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あたしは目を開けた。
夢を見ていた。また、これだ。どんな夢だったか、覚えていない。起きた瞬間は覚えていたような気がするけれど、一瞬で全てがあたしをすり抜けてしまった。忘れちゃいけないと思うんだけれど、結局覚えていることができない。
ただ、悲しい。悲しいという感情だけが夢の残滓として頬を流れた。
ぼんやり横を見ると、小萩がいた。すぅすぅと寝息を立てて眠っている。
ずっとついていてくれたのかしら…。
光が明るく障子の外を照らしていた。今は昼…ぐらいかな。
ゆっくりと重い半身を起してみた。くらりと目眩がして、すぐに横になった。
もう風邪は治ったみたい。ただ寝すぎたのか体がやけに重い。
不意に小萩が目を開けた。目をこすって、疲れたように息をついて、あたしを見て、その目がぎょっと見開かれた。
「姫様!?」
「あ、な、なに?」
小萩はあたしに掴みかかる勢いでにじり寄ってくると、いきなり泣き始めた。
「え!?なによ小萩どうしたの!?」
「ああ姫様…起きていらっしゃるのですね…よかった…」
「えっ、何が?あ、風邪のこと?やだそんなに心配してくれたの?あたしはこの通り元気になったわよありがとう」
あたしがニッと笑うと、小萩はなぜかもっと声をあげて泣き出した。
安堵の涙にしては大袈裟すぎるような…。
あたしはおろおろしてお腹のあたりに突っ伏して泣いている小萩の頭を恐る恐る撫でた。
「どっ、どうしたの?そんなに泣かなくても…」
「いめはまおんとにおかったぁあ!」
「は?」
声が籠りすぎて全く聞き取れなかった。
「と、とりあえず顔あげて…どうしたっての?あたしは無事よ?」
小萩は涙でぐしゃぐしゃの顔をあげてあたしを見た。
「ひっ、姫様は7日も目をお覚ましにならなかったのですわ…」
「7日!?嘘でしょ!」
小萩を宥めようとしていた気持ちも吹き飛んで、あたしは飛び起きた。
「本当ですわ。あんまり静かにお眠りになっていて、もしこのまま…」
小萩は声を詰まらせて、口元を覆い嗚咽した。
あたしはどうも実感できなくて、茫然としてしまった。あたしの感じた時間の流れはあくまで、いつものように寝て、起きたぐらいのものなのだ。
じゃあ、この身体の重さも7日間寝てたから…?
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