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戦国異伝
第百十三話 評定その三
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「いや、凄いぞ」
「これまで以上のお屋敷を建てて」
「そうじゃ、それこそ御殿になるぞ」
 羽柴は十万石の石高からこうも言う。
「母上に住んで頂くか」
「あと服も」
「錦じゃ」
 服はそれになった。
「錦を着て頂くぞ」
「美味いものを食って頂いて」
「これは凄いことになるぞ」
「全くじゃ」
「ははは、猿はここでも母上か」
 柴田はその羽柴を見て笑顔で言った。
「全く。母親想いじゃな」
「いやいや、やはり母親は大事にしませぬと」
「それはその通りじゃな」
「ですから早速です」
 羽柴は笑っているが言葉は引かぬものがあった。そこに彼の母親への確かな想いがあった。しかもそれだけではなかった。
「ねねもこれで苦労せずに済みます」
「奥方か」
「あれにも苦労をかけていますので」
 だがその苦労もだというのだ。
「これでかなり変わります」
「御主は女房殿も大事にするのじゃな」
「権六殿は違いますか」
「御主程ではない」
 柴田もそうしたことは大事にする方だが羽柴程ではない、柴田自身もそのことを自覚してこう言うのである。
「そこまで想うのは見事じゃ」
「そうですな。猿殿の想いの強さは」
 丹羽もその羽柴に言う。彼と滝川もまたそれぞれ十五万石を貰い晴れて万石持ちの身分となっている。
「見事なものがあります」
「己のことより母君のことか」
「それに女房殿ですな」
「己のことはよいのか」
「いえいえ、それがし自身もです」
 羽柴は手を大袈裟に思える位に振って述べる。
「やはり大事ですぞ」
「では贅沢をするか」
「はい、美味いものを食っていい服を着ます」
 柴田にそうすると述べる。
「そのつもりです」
「美味いものか」
「挽き米も充分食えますな」
 米を臼で挽いたものだ。羽柴の好物の一つだ。
「それに菓子も」
「挽き米なぞ今でも幾らでも食えるであろう」
「それはそうですが」
「何じゃ、御主は己のことは然程ではないではないか」
「そう言われればそうですな」
 羽柴自身も笑って認める。
「自分のことは満足できるだけであれば結構でございます」
「そういうことじゃな」
「それがしのことはどうにかなります故」
「わしもです」
 秀長も言う。
「己のことはどうにかなります」
「しかし母上とねねはそうはいきませんので」
「それで、でございます」
「親孝行に女房孝行となるか」
「左様でございます」
 秀長も柴田に述べる。その話を聞いた竹中がここでこう言った。
「どうも猿殿も小竹殿も欲が強いですな」
「そうなのか?」
 これまで話を聞いていた滝川が怪訝な顔になり竹中の今の言葉に問い返した。
「猿達は欲が強いのか」
「ご自身のことではなく他の大切な方の為の欲」
 竹中は
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