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ヘタリア大帝国
TURN56 ゲイツランドの壁その八

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「あくまで彼女がいる限りは、ですが」
「じゃあソビエトが破れたらか」
「今のうちに戦えるだけの戦力を集めましょう」
「そしてドクツが次にこっちに来る時に」
「勝ちます。エイリスは倒れません」
「ああ、俺だって今までここぞって時は負けてないんだ」
 イギリスもセーラに意を決した顔を見せる。彼もこれまで何度も戦ってそれで敗れもしてきたが最後の最後の決戦では敗れていないのだ。
「劣勢のまま講和して負けたことはあったがな」
「はい、ですから」
「勝つさ」
 イギリスはまたセーラに言った。
「それじゃあな」
「このロンドンは渡しません」 
 セーラも己の祖国に意を決した顔を見せた。
「例え何があっても」
「最後の一兵まで戦ってな」
「勝ちましょう」
 セーラは強い顔のままだった。そして。 
 イギリスはその彼女にあらためてこうも言った。その言葉は。
「俺今まで沢山の女王さんを見てきたけれどな」
「それでもですか」
「エルザさんとあんたは一番好きかもな」
 今度は微笑んでの言葉だった。
「いや、どの女王陛下も好きだけれどな」
「特にお母様と私はですか」
「エルザさんは明るくて気さくでな」
 イギリスはそのエルザとも楽しい時間を過ごしてきた。このことは彼にとって懐かしい思い出にもなっている。
「それでいて頼もしくてな」
「有り難かったのですね」
「セーラさんもだよ」 
 そして彼女もだというのだ。
「凄く真面目で芯が強くて。だからな」
「だから?」
「放っておけないからな」
 セーラを見ているとどうしてもそうした気持ちになるというのだ。
「だからこの戦いでも絶対にな」
「私と共にいてくれるのですか」
「俺と妹は何があっても女王さんの傍にいるからな」  
 微笑んでセーラに話す。
「そのことだけは忘れないでくれよ」
「私は一人ではない、ですか」
「エルザさんもマリーさんもいればな」
 やはりこの二人は外せない、セーラにとって何にも替えられない家族だ。イギリスもこの二人のことは何があっても忘れない。
「俺達だっているんだ。一人じゃないからな」
「だからですか」
「背負い込むことないからな。何があっても俺達がいるからな」
「はい、では」
「皆で頑張ろうな」
 イギリスは穏やかな微笑みでセーラに告げた。
「そして勝とうな」
「はい、絶対に」
 セーラも微笑んで返す。エイリスは確かに苦境にあり続けている、だがそれでもセーラもイギリスも絶望してはいなかった。一人ではないからこそ。


TURN56   完


                              2012・9・19
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