第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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いやだからそう言うのに心当たりはないと――」
「……ぁい」
「いやいや絶対にあるはずだって! 竜があんなになつくなんてそうそうないはずなんだよ!」
「……さい」
「とは言ってもだ……ん?」
「でも、そう……え?」
「うるさいって言ってんでしょー!!」
横から声を挟んできたのは、竜騎士の少年たちだ。士郎との会話を邪魔されたルイズの怒りが頂点に達すると、竜騎士に向け踊りかかった。
「ちょ、ちょっと何だ!」
「うわぁあ! い、痛い蹴られた! ちょ、この子竜より凶暴だよ!」
「ひぃぃい! た、助けてくれええ!」
悲鳴を上げ逃げ出す竜騎士を、怒りで髪を逆立てたルイズが追いかけている。竜が暴れまわるルイズたちに驚きぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。
「ひいい! こっちに来るな! く、食われる食われちゃうう!」
「やめて! ムチはやめて! 出来れば足で、あなたの美しいおみ足でお願いします!」
パニックに落ち入る竜騎士もいれば、
「落ち着け! 冷静に対応するんだ……誰かが囮になるんだ」
「「「「「お前がなれ!」」」」」
「無理無理! 絶対無理! 瞬殺されるから! あ、そ、そうだ、ゴーレムだ! ゴーレムを囮にするんだ! ゴーレムだっ! 誰でもいいゴーレ――ヒッ!」
「今なんて言った?」
竜騎士の目の前に、鞭を持ったルイズが立っていた。鞭は竜騎士を追いかけながら自分の懐から取り出した私物である。……深く突っ込むのは止めておこう。
竜騎士を追いつめた、ルイズの目が爛々と輝いている。
荒々しく吐き出される呼吸音が、まるで唸り声のようだ。
怯える竜騎士たちの前に出たルイズは、先程囮作戦を提案した少年の胸ぐらを掴むと睨み付ける。
「今なんて言ったか聞いてるのよ!?」
「……ゴーレムを囮にする?」
「……そうよ……作ればいいのよ……ないなら作れば」
少年の胸ぐらから手を離したルイズが、ブツブツと何やらつぶやき始めた。ルイズの手から逃れた少年が、尻元をついた状態で、竜騎士の少年たちの下まで後ずさる。
「……これならっ!」
士郎たちが見つめる中、ルイズが突然駆け出していった。
残された士郎たちが顔を見合わせると、襟首を掴まれていた少年が、士郎を見上げ、
「いたよ……竜より乗りこなすのが難しいの」
と、恐怖で震える声を漏らした。
日が空に登り、世界に光が満ちていく頃、数多くの光を遮るモノの姿があった。
それは戦艦。
アルビオンを攻めるためのトリステインとゲルマニアの連合艦隊だった。
その中の一つ。士郎たちが乗る『ヴュセンタール』号の総司令部に、とある報告が届いた。
「接触は三時間後か。『虚無』をどうするか決まったか?」
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