第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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りも気持ちよさそうな顔をしてるの!?」
「まともに乗れるまで、二ヶ月はかかったのに……」
悲鳴のような声を上げる少年たちを竜の背から見下ろしながら、甘えてくる竜を撫でながらポツリと士郎は呟いた。
「なんだか分からないが……すまない?」
竜の背から降りた士郎に詰め寄った少年たちが、口々に何かを言っている。泣いている者笑っている者色々いるが、悪い感じはしない。そのことに安心したルイズは、竜舎の端で壁にもたれながら、少年たちを落ち着かせようと奮闘する士郎を見つめていた。
「……シロウ」
ふとルイズは、竜舎に向かう際、士郎が浮かべていた表情を思い出す。何かを耐えるよう、歯を食いしばる士郎。僅かに顔が歪んだ理由は、怒りか悲しみか……それともそれ以外に何かあるのか……。
「……ごめんね」
士郎は最初から戦争に反対だった。そんな士郎が、こんなところまで連れてきたのは自分だ。そのことを思う度に、胸が刃物で刺されるような痛みが走る。
それでも……そう、それでもわたしはここに来なければならなかった。
自分よりももっと辛い人がいる。その人は、支えてくれる人も誰もいない中を一人歩いているのだ。彼女の友人として、それを見捨てられるわけがない。
でも、だからといって……。
シロウを連れて行く必要があったのか……。
シロウの力がどれだけ凄くとも、シロウがわたしの使い魔だからといっても……戦争に反対するシロウを連れてくることが、正しいことなのか……。
ううん、そんなの考えるまでもない。
……間違っている。
シロウを連れてきたのは、わたしの唯の我侭。
一人じゃ怖いからというだけの理由で連れてきた……。
不安で、怖くて、辛くても……それでも一人で耐えている人もいるのだ……わたしだけシロウに頼るのは、そんなこと最初から間違っている……。
……そう……だから……耐えないといけない……我慢しないと……
でも、
「どうしたルイズ。何だか元気がないが?」
あなたはそんなわたしを見逃してくれない。
「……そんなことないわよ」
「意地をはるな馬鹿」
「馬鹿って……何よ馬鹿」
「無理をするなといっている。……何が理由かは聞かないが、お前が落ち込む姿は見たくないからな」
「……ばぁ〜か……」
隣で同じように壁に寄りかかる士郎に顔を向けることなく、小さく罵倒するルイズの顔は不機嫌に染まってはおらず……それどころか優しげな笑みが浮かんでいた。
んっと目を閉じ気合を入れたルイズが、気を取り直し、顔を上げると、
「なあなあシロウさん! だから教えてくれよ! 何かあるんだろ理由が! 竜に懐かれる方法が何か!」
「……ッ!」
「ん?
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