第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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んか? 風をいくらか防げますし」
「ん? あっ」
少年の指は中甲板にある竜舎を指差していたが、顔は士郎の隣に立つルイズに向いていた。士郎がルイズを見下ろすと、心配気に見つめてくる瞳と目が合う。不安気な顔を向けるルイズの身体が微かに震えている。
「そうだな」
太っちょの少年が歩き出し、それについていこうと動かそうとした士郎の足が、
「シロウ」
外套を掴み、不安気に揺れるルイズの声により止まった。
「どうしたルイズ?」
「大丈夫?」
何がだ? とは士郎は言わず。ただ優しい笑みを浮かべた士郎は、横に立つルイズの頭を撫でる。ん、と気持ちよさそうに声を上げながらも、士郎を見上げ続けるルイズ。二、三度頭を撫でた士郎は、ルイズの頭から肩に手を移動させると、ゆっくりと歩き出す。
「……俺は大丈夫だ……ありがとうルイズ」
「……うん」
寄り添うように立つルイズは、士郎の外套を握る手に更に力を込め、身体を更に強く押し付ける。
それは、寄り添うというよりも……まるで支えるかのようで……。
「でかいな」
「ふっふっふ。凄いだろうぼくたちの竜は」
「ああ、これは凄い。俺が知っている竜の二回りは大きいな」
士郎の視線の先には、風竜の成獣がいた。士郎の知る竜。タバサの使い魔のシルフィードの二回りは大きい。その竜の前に立つ太っちょの少年。少年たちのリーダー格の少年は、その通りリーダーであった。竜舎までついていった士郎たちに、太っちょの少年は、自分が第二竜騎士中隊の隊長であると言ったのだ。
「この竜たちは、使い魔というわけじゃないんだろ」
「そうなんですよ。使い魔だったらどんなに楽だったか……何せ竜は幻獣の中で一番乗りこなすことが難しいもので」
「そうそう、竜は乗り手の腕だけじゃなく、魔力や頭の切れまで見抜いてくるんだからたまったもんじゃないよ」
士郎の言葉に、集まってきた竜騎士の少年たちが口々に竜に対する文句を口にする。しかし、顔に浮かぶ色は愛情に溢れ、自慢気でもあった。
「しかし竜か……」
「乗ってみますか?」
士郎が竜を見上げながらうんうんと頷いていると、太っちょの少年が誘ってきた。
「いいのか?」
「構いませんよ」
少年たちに促されながら士郎は竜の背中に跨り始めた。その様子を少年たちが期待を込めた目で見つめている。竜に振り落とされ、慌てる士郎の姿を見てやろうと少年たちが期待する前で、
「ふむ。思ったより大人しいものだな」
「「「「「「え?」」」」」」
竜に跨った士郎が、首を曲げ顔を寄せてくる竜の鼻先を撫でていると、少年たちが慌てだす。
「ななな何で?!」
「ベルファーデ! な、何でぼ、僕の時よ
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