第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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ような光景が広がったのだ。
ここに連れてこられた理由が分かり、苦笑いを浮かべ、そんな少年たちの様子を眺めていた士郎の前に、唯一勝利した太った少年、士郎を先導してここまで連れてきたリーダー格の少年が歩いてきた。
「す、すみません。どうしても気になっていて」
「ついでに賭けもしていたというわけか」
「あ、そ、その……」
口篭る少年に、士郎は目を細め悪戯っぽい笑みを向ける。
「ふむ、ならば賭けの対象となった使用料をいただきたいな」
「えっ! そ、そんな……」
「っぷ」
ふるふると震えながら見上げてくる少年の姿が余りにも哀れで、士郎はついつい吹き出してしまう。
「へ?」
「冗談だ冗談。で、用事はこれで終わりでいいのか?」
「あ、は、はい。すみません、これだけのことでここまで付いてきてもらって」
「構わない。君には世話になったしな」
「え?」
戸惑った顔を向ける少年に、士郎は笑い掛ける。
「俺たちをフネまで案内してくれたのは君だろ」
「知っていたんですか?」
「目はいい方でな」
「見えていたんですか!?」
驚愕の声を上げる少年の様子に、ますます笑みを濃くした士郎が頷く。
「言っただろ。目はいいほうだと」
「……良すぎですよ」
頬をヒクつかせながら笑う少年に、士郎は肩を竦めてみせる。
「空を行く君たちもそれぐらい出来るんじゃないか?」
「出来る! ……と言いたいんですが、残念ながら出来ませんよ」
不敵に笑いながら応えた少年だが、声は尻すぼみに消えていく。小さくなっていく少年の姿を見下ろしながら、士郎はタルブで戦った竜騎士の姿を思い出す。
「しかし君たちは随分と若いが、それだけ優秀ということか?」
「……だといいんですが」
顔を俯かせながら、少年が自嘲気味につぶやく。
「本来なら、あと一年は修行期間があったんですが、タルブでの戦いで竜騎士が減ってしまいまして、それを補充するため、まだまだ見習いである自分たちが正騎士になったんですよ」
「それは……」
何を言おうか迷う士郎に、顔を上げた少年が誇らしげに胸を張ってみせる。
「でも、嬉しいんですよ。国を守る戦いに参加することが出来て」
「そう……か」
「まだまだ未熟な腕ですが、それは命を掛けてでも補ってみせますよ」
頬を紅潮させ、決意を露わにする少年の姿を、歯を噛み締めながら見つめていた士郎は、小さく口の中で呟く。
「……これが、君が望んでいたものなのか……アンリエッタ」
「あの……」
「ん? どうした?」
恐る恐るといったように掛けられた声に、士郎が顔を向けると、太っちょの少年が中甲板の方向を指差していた。
「竜舎に行きませ
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