第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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ド・ラ・ヴァリエールです」
ド・ポワチエ将軍に促されたルイズは立ち上がると、大貴族の娘として恥じない流麗な仕草で一礼をした。顔を上げたルイズは、頭を下げた際、顔にかかったひと房の自分の髪を指先で背に流す。その時、軽く首を傾けた際に見える細っそりとした白い首が、会議室を照らす魔法の光を反射させる。サラサラと髪が背に流れる音が、奇妙に大きく部屋の中に響き、『ゴクリ』と、誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。
顔立ちは極上でも、背は小さく、女性的な魅力に乏しい体つきなのだが、ちょっとした仕草に妙な色気が混じっている。意識してなのか無意識でなのかは分からないが、一瞬で会議室の中にいる男たちの大部分を魅了したルイズは、これまた、流れるような仕草で椅子に座った。
「あ、そ、その。いきなり司令部に通されて驚いただろうと思うが、これには事情があってだね」
「お気遣いありがとうございます。司令部ということは、今から侵攻作戦についてのお話があるのですよね。どうぞ、わたしに気にすることなく始めてください」
ド・ポワチエ将軍が、戸惑いながらもルイズに何やら話しかけたが、ルイズはそれを遮り、アルビオンへの侵攻作戦を始めることを主張した。その余りにも堂々とした姿に、言葉を失う将軍の中、ゲルマニアの将軍が口を開く。
「その通りですな。時間がもったいない、軍議を始めましましょう」
ゲルマニアの将軍が声を上げ、軍議が始まった。
「……陽動……か……」
「何かいい方法ある?」
難しい顔の顎に手を当て考え込む士郎を見上げ、ルイズが何気ない様子で問いかける。士郎は顎に手を当てたまま、視線だけをルイズに向けた。
「……地上でならいくつか方法はあったんだがな」
「えっ! あるの?」
「……ないと思いながら質問したのかお前は」
「い、いやね。そ、ソンナコトナイデスヨ……」
そっぽを向いてカタコトで話すルイズを見下ろし、小さく溜め息を吐きながら、士郎は会議の内容を思い出していた。
会議の目的は、アルビオンに、どうやって六万もの兵を上陸させるかというものだったが、それには障害が二つあった。
一つはアルビオンの空軍艦隊。現在、連合軍の戦列艦六十隻に対し、アルビオンの戦列艦は四十隻。数だけを考えるならば、連合軍が有利なのは明らかだが、そう単純なものでないのが戦争というものなのだ。二つ目は、上陸地点の選定であった。アルビオン大陸に、六万の軍勢を下ろせる場所は二箇所。主都ロンディニウムの南部に位置にある空軍基地ロサイスか、または、北部の港ダータルネスであった。会議が進むにつれ、港湾設備の規模が充実しているロサイスに上陸することが決まったが、次に問題になったのが、それではどうやってロサイスに上陸させるのか? という
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