第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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昨晩皆で酒盛りをした。
故郷に恋人がいるという少年がいた。
手柄を立て、実家を立て直すんだと決意を秘めた少年がいた。
双子の兄弟で、同じ部隊に配属され喜んでいた少年たちがいた。
……昨晩あれだけ笑っていた少年たちの顔が、恐怖の色に染まり……覚悟を決めた目になる。
それに気付いた士郎は、座席の下から取り出したチョークと黒板を取り出し、ルイズに向かって放り投げた。そして、何かを書くよう指示すると、第二竜騎士中隊に前に出ると、ルイズが風防から突き出した黒板が護衛の竜騎士たちに見えるよう機体を動かした。
黒板には、「四十秒だけ時間を稼げ」と書かれていた。
「シロウどうするのよ!」
「ルイズこちらに来い」
士郎はルイズを操縦席に引っ張り込むと、操縦桿を握らせた。慌てるルイズをそのままに、風防を開けると、強い風に顔を顰めながら立ち上がった。
「ちょちょちょ! ちょっとシロウ! どどどどうするのよこれ!」
「落ち着け! 前と同じだ! このまま真っ直ぐ飛んでいればいい!」
「でも!」
「直ぐに……終わらせる」
完全にパニック状態になったルイズを足元に、士郎は襲いかかってくる竜騎士の群れを睨み付ける。竜騎士は速度を上げ逃げに徹する士郎たちに向かい、マジックアローを放ってくるが、護衛の竜騎士たちが冷静にそれを撃ち落としていく。今のところ順調だが、それも長くは続かないだろう。敵の竜騎士は段々と距離を詰め始め。間もなく魔法だけでなく竜のブレスの攻撃範囲にまで入ってしまう。
しかし、士郎の顔には焦る様子はなく。揺れる機体の上、更に強風がぶつかる中、固定されたように立った士郎は、迫る敵竜騎士に向かって左手を向けると、小さく呪文を呟く。
「投影開始」
士郎の手の中に、黒で固められた洋弓と和弓が混ざり合ったかのような弓が生まれる。弓の玄に右手を添えると、ギリギリと軋ませながら引き絞り……更に呪文を紡ぐ。
「投影開始」
次に現れたのは赤い剣。まるで鉄の代わりに血を煮詰めて作り上げたかのような赤黒い剣が、何時の間にか弦を引き絞る右手に掴まれていた。
士郎はギリギリと弦を引き絞りながら、自身の魔力を剣に注ぎ始める。
十秒経過。
敵が放ったマジックアローを味方の竜騎士が弾く。
二十秒経過。
突出してきた敵竜騎士を、五人の竜騎士が協力して打ち落とす。
赤黒い刀身が輝き始める。
三十秒経過。
敵竜騎士が間近に迫り、敵の攻撃に竜のブレスが混じり始めた。
懸命に避けるが、ますます増える敵の攻撃の量に、こちらにも負傷者が出始めた。
剣の周りに、赤い稲妻のようなものが走り始めた。
そして
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