第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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離せ!」
士郎の言葉と同時に、ゼロ戦を固定していたロープが外される。ロープが外され、甲板の上をゼロ戦が進み始め……。
「ルイズ! 離陸するぞ! 身体を固定しろ!」
士郎が注意を呼びかけた瞬間、ゼロ戦が『ヴュセンタール』号の上から飛び上がった。士郎は直ぐにゼロ戦の動きを整えると、巡航速度を百十ノットに調整する。
空を飛ぶゼロ戦の周りに、風竜が集まり出す。
士郎はチラリと後ろを見て、ルイズに問題がないことを確認すると、第二竜騎士中隊に視線を移動させる。
同じように士郎に顔を向けていた第二竜騎士中隊の隊長に頷いて見せると、一機と十騎の混合部隊は、ダータルネスに向かい空を行った。
『ヴュセンタール』号を離れ暫らくすると、士郎の視線が鋭く光った。
「ルイズ、身体を固定しろ……敵だ」
士郎の視線の先に、十数匹の竜騎士が士郎たちに向かって急降下してくる姿があった。相手はこちらを認識している……確実に接触するだろう。士郎は翼に設置されている機関砲を見る。
機関砲の弾はない……あるのは機首の機関銃だけ……か……
士郎は覚悟を決めると、速度を上げ、護衛の竜騎士の囲いから飛び出した。
「えっ! シロウ! どうしたのよいきなり!?」
「口を開くな、舌を噛むぞ」
護衛の竜騎士から逃げ出すように飛び出した士郎に、ルイズが戸惑いの声を向ける。士郎は短くルイズに忠告をすると同時に、未だ米粒程の大きさにしか見えない敵に向かって、
「……」
引き金を引いた。
ドドドドッ! という重低音が響いた瞬間、迫り来る竜騎士たちの動きが乱れた。纏まった動きをしていたものが、てんでバラバラの方向に向かって飛び始めたのだ。
「え? どういうこと?」
その様子はルイズの目でも明らかであり、士郎が何かをやったのだろうと言うことは予想は出来ていたが、それが何なのかわからず、誰に言うでもなく疑問を口にしたルイズに対し、何でもないことのように士郎が応えた。
「竜ではなく、騎士に当てた。手足を狙ったから生きてはいるだろうが。……竜たちは自分の主を助けに行っているようだな」
「はあ?! 嘘っ!? ここからあそこまでどれぐらいの距離があると……」
「目はいい方でな」
「……それでどうにかなるものなの……?」
ルイズが呆れたように、恐るように呟く。士郎はそんなルイズに苦笑いを浮かべていたが、
「これは……」
「……なにこれ……」
笑みは長くは続かなかった。
士郎たちの前に、百騎を超えるだろう竜騎士の群れが現れたのだ。
護衛の竜騎士を士郎は見る。
士郎の目には、竜騎士の少年たちの表情がハッキリと映っていた。
誰も彼も、皆まだまだ若い。
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