第六章 贖罪の炎赤石
第五話 天駆ける赤き猟犬
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、そうだ。整備ありがとうございました」
「いやいや、こちらも楽しませてもらったから構わないよ」
顔の前で手を振りながら、視線を士郎から隣のゼロ戦に移動させる。
「これでフネに向かうと聞いたのだが、無事にフネにおろすことが出来るのかね?」
零戦は、竜騎士を搭載するために建造された特殊な艦に搭載されることとなった。新造された、『ヴュセンタール』号と名付けられたその艦には、事前に『土』系統のメイジが錬金した、大量のガソリンが積み込まれていた。樽に収められたガソリンを詰め込むのは、出航する前に出来たが、零戦を搭載することは、その構造上不可能であり。搭載するには、どうしても艦が航行中であることが必要だったのだ。
空を飛んでいる不安定な艦に着艦することは、零戦を動かしたことのないコルベールでも困難なことだと分かる。
そんな理由で、不安気な様子のコルベールに、士郎はゼロ戦に手を当てながら笑い掛けた。
「まあ、大丈夫だと思いますよ。メイジが何人か補助してくれるという話ですし。それに……」
視線を移動させた士郎の目に映るものは、左手に刻まれたルーン。
戦闘機であるゼロ戦も武器のうちに入るため、『ガンダールヴ』の力が発揮される。一応戦闘機の操作は元々から出来ていたが、しかしそれは、ただ飛ばせるということだけでしかない。もし、『ガンダールヴ』の力がなければ、前の戦闘で落されていただろう。
士郎が改めて『ガンダールヴ』の力に感心していると、躊躇いがちにコルベールが声を掛けてきた。
「それで、その、シロウくん。本当に武器をつけないで良かったのかい? ゼロ戦の銃の弾は、もう弾切れ間近なんだろう」
「ええ、構いません。ゼロ戦に追いつけるような速度の持ち主は、この世界にはいませんし、それに――」
「それに?」
「……いえ、何でもありません」
士郎は何かを言おうとしたが、結局何も言わずに顔を横に振るだけだった。そんな士郎に、コルベールが先程以上に躊躇いがちに、しかし、聞こえないことは絶対にない声量で、士郎に話しかける。
「……シロウくんは、ミス・ツェルプストーにいざという時には、わたしに頼れと言ったそうだね」
「キュルケから聞いたんですか?」
「……何故……君は……」
士郎から顔を逸らしたコルベールは、士郎の問いに答えることなく言葉を続けた。士郎は一度軽く目を伏せると、コルベールの問いに、士郎もまた、問いで返す。
「……『炎が司るものが破壊だけでは寂しい』……」
「え?」
「以前、授業であなたはそう言っていましたが、あなたは何故、そんな風に考えるようになったのですか?」
「それは……その……」
顔を逸らしたまま口篭るコルベールを、士郎は見下ろしている。縮こまるように顔を俯かせるコル
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