アインクラッド編
回想――別れ
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リゴン片に変えたキリトはもう一度注意深く部屋を見渡して敵がいないことを確認してから緊張の糸を解いた。
20分、という時間は戦闘において決して長くはない。
が、キリトにはその数十倍の時間戦っていたような極限の疲労が襲った。
全てのモンスターに対して限界まで威力をブーストしたクリティカルポイントへの攻撃による一撃死。それが必要不可欠な状況だった。
極限まで思考をアクセラレートして、それを実現した代償としてかつてないほどの倦怠感に襲われた。
部屋に1匹たりともモンスターが存在しないことを遅まきながら体も理解したのか、その場に崩れ落ちた。
サチ達4人も同様だった。
床に座り込み得物を手から落とし、4人で背中を支え合い激しく肩で息をする。
キリトは単身モンスターの大群に突っ込んだのに注意域に割り込んだところで止まっているのに対し、4人は全員危険域であるレッドゾーンまでHPを減らしていた。
今までのとは比べものにならないほど、死に近い戦いは幸運なことに1人の犠牲者も出さずに済んだ。
だが、両手を挙げて喜べる者などいなかった。
「・・・・・・すぐにこの部屋から出て転移結晶で帰ろう」
キリトの言葉に4人とも二もなく頷いた。
正確には、フィールドを歩いて帰る気力どころか、言葉を発する元気が、残っていなかった。
「ありがとう、キリトっ! みんなが生きていたのはキリトのおかげだ・・・・!」
1人宿屋で待っていたケイタが、事の顛末を全て話し終わった後にキリトに最初に発した言葉は感謝の言葉だった。
新しいギルドハウスの鍵をテーブルに載せて帰りを待っていたケイタは、サチやダッカーが期待していた意味とはだいぶ異なるが、かなり驚いたような顔をした。
まあ、念願のギルドホーム購入達成の日に、ありえないほど疲れ切った表情――サチに至っては顔面蒼白――だったのだ。
驚くな、と言う方が無理な相談かも知れない。
絶望的な状況から全員が無事に帰還できたことにギルドリーダーであるケイタは泣き笑いのような表情を浮かべた。
落ち着いた4人もようやく生き延びた事への実感が湧いてきたのだろう、大げさなほど謝礼をキリトに述べる。
いや、大げさであると言うことはない。
なぜなら、キリトは間違いなく、あの状況において4人の命の恩人なのだ。
だが、感謝されたキリトの顔に笑顔が伺えることはなかった。
かわりに甲高い絶叫が宿屋に響いた。
「なんでだっ!!」
その絶叫はケイタを除く4人へと発せられた。
「なんで、ケイタに無断であんな危険な場所に向かった!? あの階層はトラップ多発地帯だ。なんで・・・・なんで宝箱を開けたんだ!?」
キリトの急変した態度にしどろもどろとなりながらも
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