GGO編
百十二話 待つ者
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く俯いて、しかしそれでも、まるで画面の向こうに居るはずの誰かを探すように、彼女は画面を見つめていた。
先程表れた、まるで女性のようなアバターの彼を探している事は、誰が言わずとも分かりきっている事だった。画面右下に表示されている、kiritoと、Ryokoの表示には、ほかの参加者が次々にDEADに代わっているのにたいして、相変わらずALIVEの表示が出ている。まだ、彼等があの島の何処かで、死銃と、秘めやかな戦いを繰り広げている事は、間違いなかった。
ふと、先程のサチの言葉が、脳裏によみがえる。
『不安でも、それを我慢する方法、知ってるから』
彼女の我慢は、一体どれだけの我慢なのだろう……一体、いつまでの我慢なのだろう……
SAO時代から待ち続けた彼女の“我慢”は……
──いつの日か終わるのだろうか?──
『うん、決めたっ!』
この瞬間に、アスナは、二つの事を決めた。一つ、帰ってきたら、リョウの事を一発しかってやろう。
そして二つ目……アスナはリーファに向き直った。
「リーファちゃん、二人は、自分の部屋からダイブしてるんじゃないのよね?」
「えぇ。そうです。でも私も、都心の何処かから。としか知らないんです……」
そこまでは、アスナも知っていた、だからこそ、これが終わればすぐにキリトと合流出来るよう、彼女はいま御徒町のダイシー・カフェからダイブさせてもらっているのだ。一つ頷いて、アスナはクリスハイトへと向き直る。
「……クリスハイト、貴方は知っている筈よね?キリト君が、どこからダイブしているのか……」
「あぁ……まぁ……」
ローブを着こんだ魔導師は、曖昧に頷きつつ口ごもる。アスナが一歩踏み出すと、その瞳を正面から見つめて来た。
予想外に真剣な表情に一瞬ひるみかけたが、しかし先にクリスハイトが口を開いた。
「まぁ、僕が用意したからね……行くのかい?」
先に聞かれた事がアスナとしては意外だった。此方の気持ちをくみ取ってなのか、それとも何か別の意図が有るのかは分からないが、今は素直に有難い。
仮にGGOに今アスナがコンバートしたとしても、大会に参加することが出来ない以上、手助けをすることも何もできない。しかし、だからと言ってジッとなどしていられるものか。せめて、傍に居たいのだ。彼を守り、支え、励ましたい。そのために障害を費やすことになろうとも構わないと、ずっと前に、そう心に誓ったのだから。
「えぇ……何処なんですか?」
「千代田区、御茶ノ水の病院だ。そこで心拍をモニターして、億が一に備えている……キリト君が、リハビリをした病院……と言えば分かるかな?」
柔和に微笑んで言ったクリスハイトが、本当に、予想以上にペラペラと喋るので、アスナはなんとも妙な気分になったが、それより先に考えたことが有った。
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