GGO編
百十二話 待つ者
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覚えはあるのだ。しかしどうしても、それが誰であったのかを思い出すことが出来ない。否、あるいは、初めから知ろうとしなかったのか。一刻も早くその記憶を消し去りたかった。そのために、関わろうとしなかったのか……あるいは、これはその報いか……
「お兄ちゃん達は……きっと、それを思いだすために、あの場所に居るんだと思います」不意にリーファが、そんな事を呟いた。
ある意味で、今戦場に立っている二人に一番近い場所に居る彼女の声に、皆が耳を傾ける。
「昨日帰って来た時、二人とも、普通じゃなかったんです。お兄ちゃんは、凄く怖い顔してたし、リョウ兄ちゃんも……なんでか分からないけど、怒ってるみたいな、そんな雰囲気で……」
「えっ……」
サチが、小さく声をあげた。それが何に対してであるのか、アスナには分かるようでわからなかった。
「きっと、昨日の時点で分かってたんです。GGOに《ラフィン・コフィン》のメンバーが居る事も、その人がまた人を殺してるかもしれない事も……だから、きっと決着を付けに行ったんです。昔の名前を突き止めて、PKを終わらせる為に」
その言葉は、きっと正しいのだろうとアスナは思った。ほんの少しだけ先に彼の心を察してしまう彼女に悔しくもあったが、それは重要ではない。
リョウの心までは、アスナには測れない。それを測ることが出来るのはきっと、サチの方だろう。しかしキリトに関して言うならば、きっと彼は自身に対して責任すら感じた筈だ。
「あの時、終らせておくべきだった」と。そしてそれは同時に、彼に、今こそその全てを終わらせるべきなのと言う義務感すら感じさせただろう。
いつも、そうだ。キリトも、リョウも、自分でばかり背負いこんで、此方を巻き込むような事を決してしようとしない。待つ側の身にもなってくれと、彼等に一体何度言おうと思っただろう……?
「アンの……馬鹿野郎共がぁ……!」
クラインが、左手をバーカウンターに叩きつけた。髭面を歪めて、彼は尚も叫ぶ。
「いつもいつも……水くせぇンだよ!……一言でも言えよ……そうすりゃ、行き先が何処だろうが相手が誰だろうが俺だって……」
「きっと、だからですよ……」
シリカが、クラインに泣き笑いするような顔で小さく言った。
「クラインさんも、私達も、キリトさんやリョウさんがそう言う事言ったら絶対付いてくるって、二人とも分かってて……だから……だからきっと……」
その言葉に、リズが少し微笑んだ。
「そう……よね。アイツら二人揃って、そう言う奴なのよね……それどころか今だって、敵の筈の誰かを守ってたりしてそうなもんだしね……」
そう言ったリズの言葉で、全員が画面を見る。と、アスナだけが、ふと気付いた。
皆が画面を眺めるよりも前に、一人だけ、サチだけが既に画面を見ていたのだ。小さ
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