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転生者達による神世界開拓記
閑話
第十四話
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余は名高い貴人よりも名もない市民を愛した。腐りきった国政にも、特権化した元老院にも真っ向から立ち向かってやった。後に余は暴君として罵りあげられよう……しかし、譲れぬ改革(おもい)を貫いた結果に後悔はない。  



 全ての間接税を廃止し、減税し、国民に祝い金も与えてやった。元老院から感謝の言葉には皮肉を返してやった。



 勿論、全ての改革が易しい道であったという訳ではない。元老院州属と皇帝州属を統合し、国庫を一本化し始めた時から、元老院との対立はより激しいものとなった。



 それに加え、母であるアグリッピナの問題も年々肥大化していった。やはり余を“皇帝の母にする”為の舞台装置としか見ていなかったらしい。



 一向に進まない元老院との和解、私欲で政策に口を出す母。それが余の道を踏み出す切っ掛けだったのかもしれぬな。 



 最初に余は母の暗殺を決意した。元老院との対決前にどうしてもやっておかねばならぬ案件だった、しかし、暗殺は悉く失敗に終わり、とうとう公然の場で斬り捨てるしか他なかった。



 「―――この者は余に毒を盛った。母であれ、皇帝に反する者は死罪である」



 この出来事が暴君と評されるに値するものだったのだろうな。



 それと頭痛が症状として出始めていた。原因は分かっている……母だ。幼い頃から逆らえぬよう毒と解毒薬を一緒に飲まされていたのだろう。母を斬り殺し、解毒薬の入手方法を失った余は常に熱に浮かされるようになった。



 その頃から余の歩んだ道は随分と捻くれてしまった。母に強制的に婚姻させられた妻、オクタヴィアの自殺。自身の権力をより強固にする為の、義弟の殺害。そして―――唯一の師であり、心から頼りにしていた、哲学者セネカの自殺。確かな父を持たぬ余にとって父のような存在だったセネカの自刃には堪えざるを得なかった。



 市民に絶大な人気を誇った余は、同時に親族達に死と恐怖を撒き散らす悪魔となっていたのだ。



 チルコ・マッシモから起きた火災で火災跡に黄金宮殿(ドムス・アウレア)の建造を行った余は市民達に火災犯だと囁かれる様になった。真犯人を断罪したとしても、一度たった煙はそう簡単に消えぬ事を思い知った。



 その後、ガリアで反乱が起きた。余はそれを放っておいた。熱に浮かされた身ではもう正しい判断が出来なかったのだろうな。時が経ってまたガリアで反乱が起きてしまった。元老院に皇帝の座を追われ、国賊として裁かれる身となってしまった。



 余は市民達に尽くした。市民達も余の政策を喜んでくれた。だから―――市民達が、余の退位を許しはしないと考えていた。



 ―――だが、何もなかった。彼らからは、何
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