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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
TF・T「覇王、月音!」
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音の死は免れないものだった。


「月音っ! いやぁあああああああ――――――っ!」


 心配で駆け付けた萌香が決定的瞬間を目の当たりにし、悲哀の叫び声を上げる。



 腹を抱えて哄笑する九曜はにやけが止まらない笑みのまま、泣き崩れる萌香に悲痛な現実を突きつけた。


「ハハハハハ! 今頃やって来たのか。だがもう遅い。愚かな人間はたった今、私の神聖な炎で浄化してやったぞ」


「――っ、よくも……よくも月音を!」


「穢れきっている人間の魂も、これで来世では少しはマシになっていることだろう。感謝してもしたりないくらいだ」


「月音は穢れてなんかいない!」


「フン、どうやら貴様も人間に毒されたようだな。誇り高き大妖に連なる者が情けない……。生きて恥を晒すのなら、いっそ私の手で黄泉路へ送ってやろう」


 九曜の手から灼熱の炎弾が放たれる。身体を硬直させた萌香はきつく目を瞑り、来る苦痛に備えた。


「――っ! 貴様……っ!」


 いくら待っても萌香の身に変化は訪れない。怪訝に思い目を開けると、萌香に背を向けた大柄な男が腕を広げて彼女を庇っていた。


 忌々しい目で、目の前の男子生徒――月音を睥睨する九曜。己に絶対の自信がある九曜にとってこれは屈辱以外の何事でもなかった。


「貴様、なぜ生きている……! 人間が絶えられる炎ではなかったはずだ!」


 人間如きを殺しきれなかったという事実に対する憤怒と、妖怪なら耐えられるのではという疑惑が渦巻く。


 そんな怨嗟を孕んだ目を向けられている月音の身体から幾筋の余煙が立ち昇っている。しかし、不思議と目立った火傷はなく、制服が少し焦げた程度の損害しか見当たらない。


「月音……?」


 背後からの声に黙したまま振り返った月音は萌香の目に付着した涙を指で拭うと、凍てつく殺気を帯びた視線を九曜に投げかけた。


「女子(おなご)に手を上げるとは……見下げた下種めが」


 ピキッと彼のこめかみに青筋が浮かび、悪鬼も逃げ出すような形相で睨む。


 嘗てないほどの質と量の殺気を一身に浴び、九曜の心に言い知れない感情が込み上げてくる。


 今まで陽海が蔓延るこの学園でのさばってきた彼にとって未知の経験。気を抜くと手が震え、膝に力が入らなくなりそうになる己に愕然とした。


 暴力と権力にものを言わせて独裁者のような振る舞いをしてきた彼にとって、馴染みのないこの感情を、人は恐怖心という。


「わ、私に手を上げようと言うのか……!? 私は公安の九曜だぞっ!」


 己を叱咤するかのように声を荒げた九曜は掌に紅蓮の炎を生み出した。


「貴様にこの九曜が倒
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