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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
TF・T「覇王、月音!」
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【第一巻より小宮砕蔵編】


 そこは陽海学園。妖が集う妖のための学校である。


 新年度が始まり新入生が各々の教室に散らばっている。一年の教室は一組から九組までだ。どのクラスも仲の良い生徒同士でグループを組み、思い思いに時間を過ごしていた。


 それはこの教室――一年三組も変わらない。男女で分かれ談笑している。しかし、とある一角だけポカンと開けた空間が出来上がっていた。


「……」


 そこに座っている生徒は一人の男子生徒。一九〇はある長身に筋肉に覆われた巨躯。鍛え上げた身体ははち切れんばかりに制服を圧迫し、少しでも力を入れればボタンが弾け飛びそうだ。


 黒い髪は短く刈り上げ、強面の顔は瞑想により無表情。その身から発せられる雰囲気は明らかに十代のそれではない。まるで山に籠って修業をすること三十年が経過した格闘家のようだ。


 男子生徒の名前は青野月音。来年で齢十六になる思春期真っ只中の男子だ。


 その重々しい雰囲気はクラスの和気藹々とした空気を侵略し、楽しく談笑している生徒たちは時折、チラチラと目を瞑る男子に視線を走らせる。どことなく緊迫した空気が流れていた。


「おい、テメェ」


 そんな時一人の生徒が月音に声を掛けた。皆がギョッとした顔でその生徒を注視する。


 声を掛けた生徒の名は小宮砕蔵。はぐれ妖と言われる種族であり、人間界では揉め事ばかりを起こした問題児だ。金髪にピアス、着崩れした制服と問題児に恥じない外見をしている。


 しかし、月音は聞こえていないのか、身動ぎもせずに瞑想を続けていた。砕蔵のこめかみに青筋が浮かぶ。


「おいテメェ! 聞いてんのかよ! シカトしてんじゃねぇぞゴラァ!」


 砕蔵は月音の机を蹴り飛ばし唾を飛ばしながら激昂する。月音の目がスッと開かれた。その鷹のような鋭い眼光を目の前の男に飛ばす。


「何用だ……」


 地の底から響くような低い声に一瞬砕蔵が怯むが、気を取り直してニヤニヤとした笑みを浮かべた。


「俺、最近金欠でよぉ。ちいとばかし小遣いくんない?」


 その言葉に周囲の生徒からざわめきが起こる。口々に「勇者だ、勇者がいる……」「おい、誰か止めろよ」「死人が出るぞ……!」「血祭じゃあぁぁぁ」などの言葉を交わし遠巻きに傍観し始めた。


 月音の眉がピクッと上がる。


「……去ねぃ」


「あ? テメェ、図体がデカいからって調子こいてんじゃねぇぞ! さっさと金を出せばいいんだよ!」


 一喝した砕蔵は拳を握りしめ手を振り上げる。それを見た月音は唐突に席を立った。


「うっ……」


 小宮の身長は一七五センチほどだ。対して月音
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