第十七話 甲子園にてその二十四
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「勝ったね」
「ああ、そうだよな」
甲子園から出ながら美優は笑顔で琴乃に答える、
「無事にな」
「そうよね、あのルーキーまさか」
「かなりやるんじゃないか?」
「ええ、いけるみたいだけれど」
「背番号十一背負えるクラスの」
琴乃は冗談で言った。
「そんなピッチャーかしら」
「おいおい、十一は流石にないだろ」
「わかってるわ、あの番号はね」
阪神で十一は永久欠番だ、この数を背負っていたのは。
「村山さんだからね」
「あの人だけの背番号だからな」
「誰も背負えないわよね」
「ちょっとな」
「そうね。じゃあ二十八とか二十九ね」
それぞれ江夏豊、井川慶のものだ。
「それか十八か」
「十八ね」
里香は琴乃の出したこの番号だと答えた。
「郭さんも十八だったし」
「西武のよね」
「そう。松坂投手の前の十八だったの」
「それ聞くと本当に凄いピッチャーだったのね」
「チームによるけれど十八はエースナンバーよ」
日本のプロ野球独特のことだ。確かにこの背番号を背負ってきたピッチャーはそれぞれのチームのエース達ばかりだ。
「だから」
「そうね、あのピッチャーはね」
「あと一回だけれど」
里香の言葉に熱さが宿った。
「頑張って欲しいわ」
「ホームラン浴びずにね」
「ええ、本当にね」
里香はこのことを心から願っていた、しかしそれは杞憂だった。
ルーキーは球界も三者凡退で抑えた、華々しい完封勝利だった。
琴乃は歓声に沸く甲子園の中でビールを片手に言った。
「いやあ、いい試合だったね」
「ええ、大物ルーキー登場ね」
「凄いじゃない、初先発初完封って」
笑顔で彩夏に話す。彩夏もビールを飲んでいる。
「やってくれたわね」
「そうね。あのピッチャーだと」
彩夏も言う。
「まぐれでもない限り」
「やってくれそうね」
「コントロールと速球はまぐれではどうにもならないから」
里香は二人にこのことを言った。
「それはね」
「持っている力だからなのね」
「そう、本来のね」
だからだと琴乃に返す。
「ひょっとしてあの人ボールはストライクゾーンの隅だけで」
「真ん中とかには?」
「一球も投げてないのかも」
その抜群のコントロールでそうしたのではないかというのだ。
「そうかも知れないわ」
「真ん中がないって」
「阪神のピッチャーって抑えてくれるけれど」
防御率自体は確かにいいのだ。
「肝心な時に甘いコースに入って」
「打たれるのよね」
「そうなのよね」
だから負けるのだ。またこの話になる。
「けれどいつも真ん中に投げない人なら」
「その心配もないわよね」
「今六月だけれど」
梅雨真っ盛りだ、今日jにしても幸い止んでいるという感じだ。
「
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