第5章 契約
第53話 炎の少女
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本気と言う訳ではないはずなのですが……。
刹那、俺の周囲の炎の精霊たちが急速に活性化を開始した。
俺の回避を完全に断つ為に、空中に描き出される炎の壁。俺の式神のサラマンダーも得意としている、相手を閉じ込める炎の結界。
瞬間、やや下方よりの斬り上げる一閃を、今度は七星の宝刀で防御する事はなく、炎の少女の左肩に左手を置き……。
その左手を支点にして、空中で宙返りを行うかのような最小限の動きで回避する俺。
目の前を炎の羽が。そして、回避した俺の左半身のすぐ傍を、炎を纏った毛抜形蕨手刀が斬り裂いて行く。
そして、一瞬の後に唯一の炎の壁がない地点。崇拝される者の背後に、最小の動きで彼女を躱した後に逃げ込む
一瞬の息継ぎの間の後、再び体勢を立て直して、炎の少女に相対す俺。
しかし、次から次に巡り変動する視界に、脳内の処理が追い付いているのが不思議なくらいの状況。
そう。本当に生か死。そんな、ぎりぎりの戦いしか用意されていないな。
俺の戦いと言うモノは……。
自らの置かれた運命とやらに、生まれてから何度目になるのか判らない回数目の自嘲的な台詞を思い浮かべながら、少し炎の少女から距離を取る俺。
流石に、先ほどのような、炎の壁プラス連続攻撃のような合わせ技を何度も食らう訳には行きませんから。
「流石に女神ブリギッド。シャレにならへんぐらいに強い」
そう軽口を叩きながら、俺の周囲に水行術の冷気陣の呪符を起動。
尚、俺の軽口を最後まで聞く事などなく、炎の少女が足裏を爆発させ、一直線に飛び込んで来る。
そのスピードは、まさに神速!
片や、俺の方は、未だアガレスは起動させず、自らの生来の能力のみで相対す。
「この、ちょこまかと!」
仏頂面の女神さま……。炎の少女が、俺に対してそう悪態を吐いた。
「お父さん、そんな口の悪い女の子に育てた覚えは有りませんよ!」
そうクダラナイ軽口を叩きながら俺は、ギリギリまで引き寄せた炎の少女をいなすように、再び、更に上空へと身を踊らせていたのだ。
但し、その際に、彼女の目前に、何かをばら撒いて行く俺。
そのばら撒かれた何か……大量の水弾の呪符の中心……つまり、冷気陣の張られた空間の真ん中に一直線に突っ込んで仕舞う崇拝される者。
その瞬間、崇拝される者の周囲で爆発が巻き起こる。
そして、その刹那、周囲を目も眩むような白光と、轟音が世界を包んだ。
そして、
……………
…………
そして、次の瞬間。
完全に気を失い墜落して行く崇拝される者を空中で受け止めた俺が、そのままゆっくりと地上に降り立っていたのだった。
☆★☆★☆
「オマエ、あの爆発させた魔法は何?」
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