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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第53話 炎の少女
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ゆっくりと打ち寄せる波の音。その音には、今晩、ここ……ラグドリアン湖に来た時から変わる部分は感じられない。

 しかし、ゆっくりと少し首肯いた彼女の発して居る雰囲気に不満な様子は有りませんでした。そして、この場に彼女……湖の乙女が戻って来たと言う事は、これで、今回の任務も無事に終了した、と言う事なのでしょう。

 ならば、次は……。

「モンモランシーも、大変な時に来てくれて、ありがとうな」

 次は彼女への御礼ですか。彼女の場合はイザベラ姫が、タバサのバックアップ要員として命令を下して置いてくれた可能性も有りますが。
 自らが切り裂いた手首を魔法で治療し終えた金の髪を持つ魔女(モンモランシー)が、

「ここは、私の家の直ぐ傍ですからね」

 にこやかな笑みに彩られた容貌を俺に見せながら、そう答えた。黒き魔女に相応しくない陽に属する気を発しながら。
 但し、この答えでは、彼女がここに現れた理由が、イザベラ姫の命令だったのか、それとも、本当に俺達の事を心配してやって来てくれたのか判りませんでしたが。

 そうしたら、最後は……。

「崇拝される者。あんたも、急に呼び出したりして悪かったな」

 一応、彼女にもそう言って置くのですが……。
 ただ、俺としては、彼女に水の邪神の排除のすべてを任せる心算など無かったのですが。

 何故ならば、これは俺とタバサの仕事。それと、湖の乙女にも関係は有ったのですが、崇拝される者には一切、関係のない話でしたから。

 確かに、伝承上の共工ならば、木徳の伏儀、女?の世を押し流そうとして、最終的には火徳の女神、祝融と戦って敗れると言う呪を受けていましたから、炎属性の崇拝される者に因って共工が倒された現状は、伝承通りの状況と成ったと言う事なのですが……。

 しかし、何故か俺の事を不機嫌そうに睨め付ける崇拝される者。その瞳には戦いの場に身を置く者特有の冷たい炎が存在している。
 そして、

「わたしはオマエの事を認めた覚えはない」

 ……と、その視線同様、非常に不機嫌そうな声音でそう告げて来る彼女。
 成るほど。見た目は少女そのもの。しかし、今までの対応は、誇り高き武人。急に呼び出された際には不満を示す事はなかったけど、状況が落ち着いた今は……、と言う事ですか。

「ならば、今からでも遅くは有りませんか」

 俺は、自らに施した魔法反射の呪符を破り捨てながら、そう口にする。
 その俺の行動を見た少女達の反応は……。

 蒼き吸血姫(タバサ)は普段通りの視線で俺を見つめるのみ。彼女は、俺の事を信用してくれている。
 そして、それは湖の乙女も同じ。俺の方には何の覚えも有りませんが、彼女は、俺の前世と何らかの関わりが有ったらしい存在。
 つまり、人は
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