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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第53話 炎の少女
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存在。――炎の精霊王なら、彼女は間違いなく『真火』が扱えるはずですから。

 それを行わなかったのは、その少女の姿で戦う事を、自らのルールと課したと言う事なのでしょう。
 それに、もしかすると、俺に異形の姿を晒す事によって畏怖を与える事を、無意識の内に忌避したのかも知れません。

 何故ならば、この世界……。このハルケギニア世界の魔法使いたちは……。

「確かに、式神使いも私の能力の一部。しかし、貴女には、それよりも龍神としての能力で認められたい。
 そう、私が願ったのです」

 もっとも、本当に荒ぶる龍神の能力で相手をした場合、俺に未来は無かった可能性も有るのですが。

 ……そう。俺には、切り札が有ります。人身ではなく、龍身に転じて戦うと言う方法が。

 但し、一度(ヒトタビ)龍身へと転じた場合、再び、人身に戻る術を俺は知らないのですが。
 多分、我を失い暴走状態となり、まさに破壊の権化とかした邪龍となって、敵も味方も、そして無関係な者も関係なく、等しく破壊し尽くす。
 その後、正気に戻るかどうかは、神のみぞ知る。

 ……と言う、剣呑極まりない、最後の手段が。

「オマエに取って、精霊とは何?」

 更に、仏頂面の女神さまの質問が続く。
 矢張り、その質問が来ますか。

「今まで、ずっと、私に取って精霊とは友達でした」

 産まれてから、……精霊の存在を知覚出来るようになってからずっと、俺に取って、精霊とは友で有った。例え、住む世界が変わったとしても、其処の部分に変わりは有りません。

「そして、これから先もずっと友達で有り続ける存在」

 その言葉を聞いた崇拝される者女神ブリギッドが……笑った。
 そして、この瞬間が、あぁ、この()は笑えるのだ。……と、そう思わせるに相応しい、笑顔を魅せた瞬間であった。

 そして、

「わたしは、貴方。武神忍を炎の契約者として、認めます」

 そう俺に告げたのでした。


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