第5章 契約
第53話 炎の少女
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刹那、動き出した水の邪神が、真っ直ぐに俺に向かって突き進んで来る。
そして、次の瞬間、紅い一閃が宙に線を引いた。
そう。大筒の発射音にも似た風の爆発を伴い、超加速で俺に接近して来た水の邪神が一直線に突き出して来た長剣を、普段通り、半歩、右足を踏み込む事に因って躱した俺。
……の心算でしたが、頬に走る一筋の紅い線。
しかし、これは浅い。
但し、完全に紙一重で躱した心算だった俺を、表皮一枚とは言え斬り裂いたのは、彼女が初めて。
そう。俺には精霊の護りが存在して居り、威力の低い攻撃などで俺の身を害する事など出来ないはずなのですが。
身を翻して、一度距離を取る水の邪神と俺。
「流石は、木徳の女?の天下を奪おうとして洪水を起こし、すべてを押し流そうとした水の邪神と言うトコロか」
この場に存在する他の誰に目もくれる事もなく、真っ直ぐに木行の俺を目指して来る辺り、共工と龍族の確執は神話時代から現在も続いていると言う事ですか。
その瞬間。飛燕の如き速度で、長き黒髪に炎の精霊を纏わせ、瞳に灼熱の光を灯す影が俺の脇を通り過ぎ……。
そう。水の邪神と、木行の龍種の一瞬の交錯の後に最初に動き出した崇拝される者が、彼女の手にする神刀を振るったのだ。
柄頭を飾るは蕨の若芽のように渦巻く特徴的なデザイン。八十センチほどの刃渡りを持つ、蕨手刀と呼ばれる日本刀の源流に似た神刀を手にする崇拝される者。
対する水の邪神は、黒き刃を持ちし柳葉刀。
風を巻き、大地を蹴って跳び上がった崇拝される者の炎を纏いし神刀と、黒き刃の柳葉刀が交差する。
瞬間、鼓膜を叩く、高き金属音。
上段よりの太刀を弾き返された崇拝される者が、体重の無い者かのような軽やかな身のこなしで、神刀と、魔刃の激突により発した衝撃を利用して後方への宙返りを魅せる。
翻る闇色のマント。振り下ろされるは、同じく、闇色に染まった繊手。
但し!
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ!
水の邪神の柳葉刀が閃く度に、撃ち落とされる霊樹の矢。しかし、このモンモランシーの援護により、水の邪神は、崇拝される者に対して、追撃を行う事が出来なかったのは間違いない。
刹那、着地したままのやや身体を低くした体勢から蕨手刀を構えた崇拝される者が、着地した足裏を爆発させるようにして加速を付け、再び、水の邪神へと斬り掛かる!
……と言うか、こいつ、俺の言う事をまったく聞いていない!
但し、そうかと言って、彼女が俺の依頼はきっちり熟しているのは間違い有りません。
そう。神刀に彼女の纏いし炎が映え、炎の精霊たちが軽やかに舞い踊る度に、仕事を与えられる事に対する歓
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