十一話 「『二人の』為」
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で踏み込み体重を込めて更に奥へ。肉をかき分けて沈んでいく。
根元まで、心臓まで埋まったことを確認すると同時、何か思うよりも早く手に力を入れる。グルリ。その刃が回る。
肉を混ぜるような奇妙な、そしてひねり潰すような柔らかく重いヌプリとした感覚。半回転もしないうちに肋骨に当たり刃が止まる。
「アズマ、だったか。陳腐な言葉だが、存分に恨んで呪ってくれ。向こうで会えたらいいな」
「――し、ね」
ゴポ。嗤いに歪んだ口から血が溢れ出す。最後の力を振り絞った言葉が俺の耳元で囁かれる。
俺の目の前で相手――アズマの体が糸の切れた人形のように地に倒れた。
「……」
少しして、刺さったままのチャクラ刀をゆっくりとアズマの体から抜いていく。
溢れ出してくる血に服が濡れ、ああ、服を変えなきゃ、ふとそう思いながら抜き取る。
立ち上がって自分の起こした惨状を見る。じわりじわりと地面に出来ていく血だまりを見ながらチャクラ刀を拭おうとし、ふと両手で握ったままのことに気づく。
手を剥がそうとしても剥がれない。投げ飛ばすように大きく手を振り払うが、くっついた様に手は張り付いたままだ。
「は……――っ!?」
哂おうとしたした瞬間吐き気が襲ってくる。
初めて明確な”自分の意思”で犯した殺人。
こみ上げてくるそれに耐え切れず膝から力が抜ける。丸まる様に体を折って嘔吐する。
喉の焼かれる鈍い痛みとともに何も食っていないはずの胃の中身がぶちまけられる。
吐けるものなどなく絶えず粘り気のある胃液だけが口から流れジワリと目に涙が浮かぶ。
胃と喉が痙攣するほどに酷使され、やっとの事でそれが止まる。
――ジクジク、ジクジクジク……
今更思い出したように頭痛が疼き鳴り止まない。脳の中を形のない虫に這い回られるような鈍い痛みが止まらない。
「……予想は出来てたが、やはり気持ち悪い。最悪だ。白がいないくてよかった。二度としたくねぇ」
吐く事は予想できていた。だからこそ白と離れたのだ。こんな醜態を見せないために。
俺のこんな姿、白が見れば戸惑いが生まれるかもしれない。さっきの白の言葉を考えれば尚更だ。
事実、最悪の気分。体に力が思ったように入らない。
けど、
「問題なく立てる、か。この程度で済むってことは思ったより心に来てないのか。どれだけ俺は罪悪感を他人に擦り付けてんだよ」
ゆっくりとだが確かに立ち上がれた自分をつい自嘲してしまう。立てないかと思っていたがそうでもないらしい。それに思ったよりも心の乱れが弱い。無意識に他人に理由を押し付けているからだろう。改めるつもりなど一切なけれど、それでもそんな自分が嫌になる。
服の袖で口を拭い、やっと離せた手でチャク
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