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弱者の足掻き
十一話 「『二人の』為」
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を離すことを許さないように強く握る。
 触れた肌から白の躊躇うような感情が伝わってくる。白の目がこちらの目を見る。だがそれに何も言わず、ただ強くナイフを握らせる。

 倒れた奴らが生きていたら困る。化けているとはいえ変に話を広げられるかもしれない。

「俺の事裏切ったりないがしろにするつもりがないのはさっきので分かった。だからケリつけたらそれでいい」
「……分かりました。向こうはお願いします。ですが今からでは」
「大丈夫だよこっちは」

 しっかりと頷いた白にちらりと手にあるチャクラ刀を見せる。“輝きの薄い”それを見て白はこちらの意図を理解し頷く。
 これも“実験”だ。初めから逃がすつもりなど、あの相手が逃げきれる事など無理なのだ。
 袖で血を拭う白に背を向ける。

「じゃあ―――」
「イツキさん。僕なら、別に大丈夫ですよ」

 唐突に、何の脈絡もなくかけられたその言葉に何か強い意志を感じて足が止まる。
 殴られて血を流した顔で、その傷を与えた張本人に酷く優しい顔が向けられる。

「僕は大丈夫です。殺せと言われれば殺します。殴られろと言われれば殴られます。好きに使って……言われれば、従います。したくないことは全部、言ってくれれば大丈夫です。代わりますから」

 使ってくれと白が言う。罪悪感など考えるな。お前の道具だからと。
 それをさせる為の道具だと、したくない事をさせる為のものだから。確かにそうだしそう言ってきたが、なぜ今言うのか。
 今の自分の”何”を感じ取ったのだコイツは。

「何、を」
「押し付けて下さい。その為にいます。ですから――」




「そんな今にも自分を殺してしまいそうな顔、しないで下さい」

「――――ッ」

 酷く優しいその言葉に今まで抑えていたモノが出そうになる。酷い頭痛が金切り声を上げて襲ってくる。
 何か言おうとして、けれど何も答えることが出来ず背を向け走り出す。

 なぜ気づかれたのか、何故それをここで言うのだこいつは。
 隠していたはず。その為に躊躇わなかった。気づかれては意味がない。だからそれを突きつけられたくなかった。
 縋り付きたくなる酷く残酷な言葉に貫かれ叫びたくなる。くそ、クソクソクソクソクソ、くそが―――







 零された血を辿って少し走った先で逃げた相手は倒れていた。
 立ち上がろうとして足掻いたのだろう。出血による症状にしてはおかしい自分の体の異常を理解できていないのだ。足は動かず、苦しさからか胸を抑えている。
 地に伏した相手の視線が俺を向く。

「死にそうな顔、してるな、クソガキ」
「……どいつもこいつもうるせえよ。俺が死ぬ何ざ、それを“受け入れる”何ざ俺が許さねぇよクソが」

 それを認
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