十一話 「『二人の』為」
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薄暗い山の中をとある二人が歩いていた。小奇麗に身を整えている中年男とそれとは対照的な縒れた服の二十ほどの青年だ。
既に陽は落ち月がわずかに顔を覗かせ辺りを照らすのは微かな月ひかりと手元の火の光のみ。
サクサクサク……硬い靴が草を踏みしめる音が静かに辺りに響き夜の闇に消えていく。
「全く、何で俺が買い出ししなきゃならないんだ糞が」
「すんませんアズマさん。でもそれなら他の人達に言えば……」
「バカ野郎出来るかそんな事。顔割れてないのは俺とお前がくらいだろうが」
苛立たしげに吐き捨てた手ぶらの中年男――アズマは言い捨てバックを持って歩く隣を歩く部下の青年の腹部を殴りつける。
二人は近くの街に食料などの買い出しに出かけ今帰るところなのだ。
態度や言葉など対照的な二人の言動がその立場の上下を暗に示している。
「時間には気をつけろって何度も言ったろうが。欲出して漁り続けて顔見られるなんざゴミが。糞の役にもたちゃしない」
「わ……オレは止めました。止めましたよ? でも大丈夫大丈夫だって言われて」
「言い訳すんなよ」
だから自分は悪くない、悪いのはあいつら――そう暗に告げる青年の頬をアズマの拳が叩く。
青年はいつもこういった態度だ。実際、その通りではあるのだろう。上から言われたことを本人は守るが周りに強く言えない。我の強い他の連中に何かを強く通そうという意思が持てない。
買い出しの袋が落ちそうになったのを必死で支え、何を言っても無駄だと悟り青年は口を閉ざす。
「ならよ、あいつらはもう使えないから切り捨てるか? そうすりゃ重荷は切れるし動きやすい。分け前も増える」
「いやいやそんな……」
アズマに首を捕まれ耳元で言われた言葉に青年は口ごもる。答えようがない、どう答えても正解が見当たらないからだ。乗れば仲間をたやすく裏切るのだと思われるかもしれない、断ればそれらと一緒だと思われるかもしれない。そのどちらでもないかもしれない。
アズマは彼らの統括者だ。情報を集めてそれをもとに計画を立てる。一番年長であるのに彼らの中で一番動けるものでもある。青年などとか身体能力もはるかに違うだろう。
誘うように、言い聞かせるようにアズマは掴んだ首を離さず力を増しながら続ける。
「簡単だよ。五人なんだ。毒盛るか寝込み襲うだけで終わりだ。役たたずは邪魔だよなぁ……」
「……っ」
初冬の寒さに合わない汗が青年に浮かぶ。青年は普段から飄々とし下にいて角を立てないように動き利益を得る人間だ。性格からかいつも料理や掃除など押しつけられ、そしてそれが普通になるほどに。
だがその言葉や態度を無視して押しつぶさんとばかりの圧力に小さく開いた口からいつもの受け流す言葉が出ない。
掴まれた頸部から全
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