第百四十四話 魂の凱歌
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「自分が間違っていることを容易には認められないのだ」
「そう。人間だから」
「そうだ。そういう意味でもやはり私は人間だ」
人への批判の言葉だった。しかしその言葉もまた温かいものになっていた。
「醜いものだ。だがそれと共に」
「それと共に」
「温かいものなのだな」
「そう。人は確かに醜い部分もある」
サンドマンもそれは認めることだった。人のその顔も。
「だがそれと共に温かく美しい。人はそういうものだ」
「私もその人なのだな」
「そう。義兄さんも人間なんだ」
その醜く温かく美しい人間だというのだ。
「だから。もう」
「全ては終わった」
これまで彼が発したことのないような温かさのある言葉だった。
「ジーク、さらばだ」
「義兄さん・・・・・・」
「ルフィーナは幸せだった」
そして妹のことも言うのだった。
「御前を愛し愛されたのだからな」
「・・・・・・・・・」
「生きろ」
次にサンドマンに告げた言葉はこれだった。
「御前は生きろ」
「僕に・・・・・・生きろと」
「御前の考えることはわかっている」
彼に告げ続けるのだった。
「このまま。死のうというのだな」
「それは・・・・・・」
「御前の考えていることならすぐにわかる」
目もまた温かいものになっていた。
「己の罪を償いタナトスの下へ行こうと考えているな」
「・・・・・・・・・」
「行くな。御前が行くのはまだ先でいい」
それでいいというのだ。
「私はそこで長い間ルフィーラと共に御前を見たい」
「僕を・・・・・・」
「そうだ。幸せに生きている御前をな」
これが今の彼の言葉だった。
「見たいのだ。だから行くな」
そしてまた言うのだった。
「御前は残れ。いいな」
「そして義兄さんは」
「見ている。御前のことを」
ゼラヴィオンは今炎に包まれようとしていた。そしてヒューギもその中に消えようとしていた。
「だからだ。まだいい」
いいとも告げたのだった。
「そこにいろ。いいな」
最後にこう告げて炎の中に包まれていく。ヒューギ=ゼラバイアは微笑み今静かに息を引き取ったのだった。
そして今ルフィーラも。サンドマンに対して微笑んでいた。
「ジーク」
「ルフィーラ・・・・・・」
「貴方と一緒にいたこと。忘れないわ」
それは紛れもなくルフィーラの言葉だった。彼がよく知る。
「だから。さようなら」
「君も僕はまだここにいろと」
「貴方はまだやるべきことがあるから」
だからだというのである。
「貴方の幸せを見守っているわ。だから」
そして言う言葉は。
「さようなら」
こう言って彼女も姿を消した。後には微笑みだけが残った。
その時には周りの戦いも終わっていた。ゼラバイア達は全て倒されていた。ロンド=ベルは今回の決戦にも勝利を
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