ララバイ編
EP.12 ジークレインとワタル
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事だ、エルザ・スカーレット」
「弟だと……!? そんな事が信じられる訳……」
「まぁ、同じ顔だしな……間違えるのも無理はないさ。……そっちも、それでいいか?ワタル・ヤツボシ……」
「……俺は『ジェラール』っていうのが誰か知らないので、何とも……」
――……何だ、コイツは? 普通の思念体じゃないな……それに……。
ジークレインは軽薄な笑みを浮かべながらエルザにそう言うと、ワタルの方に向いて言った。
ワタルは、目の前の男が孕む、思念体越しでも分かる狂気と敵意、それに普通の思念体に比べて言いようのない違和感を抱く思念体に、警戒レベルを上げていた。
「……なら、お前はアイツのやろうとしている事を知っているのか?」
「ああ……だが証拠が無いからな。捕まえる訳にはいけないのさ……難儀な立場だよ、まったく」
「黙認するというのか!? ふざけた事を……!!」
「……それぐらいにしておけ、エルザ。何の事かは知らないが、周りに知られたい事ではないんじゃないのか? ……じゃあ、俺達はこの辺で……」
ワタルは、ジークレインに対する不信感を後回しにして、爆発寸前のエルザを抑える事にした。
頭に血が上り過ぎていた事に気付いたエルザはハッとして、黙り込んでしまったため、ワタルは彼女の手を引いて、その場を後にした。
用を済ませて評議院の支部を出ても、エルザの顔は晴れる事は無く、食事、という気分でもなかったため、そのままマグノリア行きの列車の中で、漸くエルザが口を開いた。
「……」
「……あの、ワタル……」
「なんだ?」
「いや、その……聞かないのか?」
「聞いて欲しいのか?」
何を、とはエルザもワタルも言わなかった。もう付き合いも長い。互いに聞かれたくない事がある事ぐらい、ワタルもエルザも知っていた。
「いや……すまない」
「……違うだろ、こういう時は」
「……そうだな。ありがとう、ワタル」
「……どういたしまして」
フッと微笑み、礼を言うエルザの顔を見て、心臓を大きく鳴らしつつも、何とか落ち着いたみたいだな、と胸を撫で下ろしたワタルだったが……
――このままで済む……とは思えないな、流石に……。
ジークレインに対して、予感じみた物を感じていた。それはマグノリアに帰っても晴れる事は無く、ワタルの胸で燻り続けていた。
そして二年経った今だが……
「それで……こんな見え見えの茶番はアンタが……?」
「心外だな……俺は妖精の尻尾を弁護したんだがな。……じじいどもが責任を取りたくないからって、身代わりにお前を選んだんだと」
「……くだらない。ところでなんでアンタがこんなところにいるんですか? もう裁判の時間
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