GGO編
百十一話 消えない叫び
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眼だけが私を見降ろしていた。
『なんでそんな事言うの?前の私に戻ったら、また苛められちゃうよ。今はとっても幸せなんだよ?なのにスィは私の邪魔するの?怒るよ?邪魔するなら……』
言いながら、彼女は持っていた槍の穂先を私の目に付きつけた。
『スィも殺しちゃうよ?』
私を見降ろすその笑顔は、余りにも明るくて、屈託がなくて……だからこそ、私には今の彼女がもう完全に私の知っている彼女では無いことが確信できてしまった。
彼女は、もっと小さくはにかむように、可愛らしく笑う子だった。優しく、モンスターを殺すことにすら罪悪感を感じるような……そんな子だったのだ。
だから私は、最後の望みを掛けて、言った。
『お願い……“アイリ”……』
だけどその言葉はあまりにも小さくて、
『……そっか♪』
結局のところ、もう壊れてしまった何かを……取り戻してはくれなかった。
『残念♪』
一片の迷いも無く振り下ろされる銀色の槍。それを見ながら、私は思った。
彼女に、フィールドに連れ出したのも、自分の攻略に付き合わせたのも、オレンジから守りきれなかったのも、私だ。彼女がこうなってしまった原因が私だと言うのなら……彼女が私に刃を振り下ろすのは、当然なのかもしれない。
彼女を守る責任も果たせないなら……初めから、この子を始まりの街から連れ出したりなんか……
『ごめんね……』
小さく呟いて……
『おーっと、なにしちゃってんの?お嬢さんよ』
『っ!?』
『え?』
突如として割り込んできた、別の槍が彼女の槍を受け止めていた。後ろを振り向くと、重そうな金属製の鎧に身を包んだ、しかしヘルメットと手鋼だけを付けていないと言う妙な格好の男が、そこに立っていた。
『あー、なる。もしかして、最近この層に居るって言う女オレンジってお前さん?』
『……あんた、何?』
『俺?俺ぁあれだ。しがないソロプレイヤーだな。うん』
『死ね』
最後まできいて即座に、アイリは自分の槍を男に突き出した。それを……
『ふっ』
男は絡めるように槍の柄で受けると、アイリの槍を軽々と跳ね上げ……吹っ飛ばした。そして……
『……あれ?』
『やだね』
ドズっ!!と、気持ちの悪い音がした。重厚な男の槍が、アイリの胸の中心に突き刺さり、そこから真っ赤なポリゴンが弾けていた。
『あ……あ……?』
『そっくりそのまま返すぜ』
凄まじいスピードで、アイリのHPが減って行った。グリーンを振り切り、イエロー、レッド……
『待っ……アイリ……!』
『ス、ィ……』
思わず伸ばした手に答えるように、アイリが私に手を伸ばす。でもその手が触れ合うより前に……
『死ね』
ズボッ!と男が槍を引き抜き、その瞬間、アイリは、私の親友は、私の目の前で爆散し
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