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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
第十三話「葛藤と決断」
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 俺を妹さんのように放っておけないと言った、あの時のモカさんの顔が綺麗で。脳裏にずっと焼き付いているんだ。


「よう、色男」


 どこからともなく声を掛けられた。見れば壁に寄り掛かった小宮が、例のニヤニヤした顔で俺を眺めている。つかつかと近づいて来たと思えば、いきなり俺の胸倉を掴んだ!


「ぐっ……!?」


 そのまま片手で持ち上げて俺を壁に叩きつける。胸が圧迫して息が……っ!


「テメェ、昨日はモカと遊び呆けていたらしいなッ! 許せねぇ、何なんだテメェ! テメェの正体は何なんだ、言ってみろッ! あぁ!?」


 ――さ、逆恨み……? でもここで人間だなんて言ったら殺される……っ!


 何でもいいからこの状況を切り抜けないと、と思った俺は自然と口を開いていた。唯一、俺が知っている名前の名を。


「ば、バンパイア、とか……?」


 小宮の眉が跳ね上がり、次の瞬間拳が飛んできた!


「うわ――!」


 拳は頬を掠めて背後の壁を粉砕する。音を立てて崩れる瓦礫に血の気が引いていくのを感じた。


「おお、パンチ一発で粉々に……!」


「やるな、あいつ!」


 遠巻きで見ていた野次馬たちが賞嘆の声を上げた。こ、こんなの食らったら、死んじゃうよ!


「テメェがバンパイアだと!? バンパイアは不死で凶悪な西洋の大妖だぞ! 『力』に関しては妖怪随一と言われている! テメェみてえなモヤシがそのバンパイア!? ふざけんなッ!」


「ひぃっ!」


 バキバキと音を鳴らしながら小宮の手が変形していく。筋肉が膨れ上がって手が大きくなったんだけど!?


 ――こ、殺される……!


 思わず目を瞑った時だった。


「はい、そこまで。まったく、この壁を誰が修理すると思っているんだ。業者さんも楽じゃないんだぞ?」


 いつの間にか隣にいた須藤先生が小宮の手を掴んでいた。全く気配がしなかったんだけど。というか、いつから居たの!?


「何の用すか、センセ」


「これ以上騒ぎを大きくするのは教師として見過ごせないな。ほら、手を離しなさい」


 先生が小宮の肘を軽く叩くと、不思議と手が開いた。そのまま崩れ落ちそうになる俺を先生が支えてくれる。


「おっと、大丈夫か?」


「は、はい……」


「君たちも早く帰りなさい。小宮も」


 はーい、と散っていく野次馬たち。舌打ちした小宮は鋭い目で俺を一瞥した。


「とにかく二度とモカに関わるんじゃねぇ。次にあいつと話しただけでも殺すからな」


 そう言って去っていく小宮に俺は何も言えなかった。


「やれやれ、血の気の多
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