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SAO:アインクラッド〜神話の勇者と獣の王者〜
魔王の正体。そして……
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》はSAOで最も反射神経の高いものに与えられ、その使い手が魔王と戦う勇者となる予定だった……。勇者はユニークスキルという選ばれた力を持つ者たちを集め、私と戦うはずだった……先駆者は君だよ、セモン君。君は最初の勇者として私と戦う先駆けだ。キリト君が《速さ》の勇者なら、さしずめ君は《力》の勇者かね」

 ヒースクリフはキリトと、そしてセモンの方を向いて言った。

「……で、どうするんだ?ここで俺たち全員を殺して隠蔽するか?」

「まさか。そんなナンセンスなまねはしないよ。本来ならこれは、第九十五層で行われるイベントのはずだったのだが……私は一足早く、最上階の迷宮区《紅玉宮》にて待つことにするよ。なぁに。勇者と、私の育てた《血盟騎士団》を加えた攻略組なら、たどり着けるさ……」

 ――――育てた?

 ――――その言い方は、まるで《血盟騎士団》が、ただのモルモットであったかのような―――――

 そう感じたのは、セモンやキリトだけではなかった。ヒースクリフの後ろに座り込んでいた血盟騎士団の幹部が、そばに落ちていた自分の剣を拾うと、ヒースクリフ改め茅場に切りかかったのだ。

「よくも……俺達の忠誠を……よくも……よくもおおおぉぉぉぉ―――――!!!」

 しかしその刃は、ヒースクリフに、否。その近辺にすら届かなかった。

 
 ドスッ、という、鈍い音が響いた。男の腹に、背中から漆黒の大剣が貫通していた。それは即座に上へと切り上げられ、男の体を真っ二つにした。当然のようにそのHPバーが消失する。何が起こったのか理解できない、とばかりに虚ろな表情のまま四散した男。彼の後ろに立っていた下手人を、セモンは知っていた。

 直前まで、仲間として、長い時を共に戦ってきた存在だったからだ。

「――――ハザード……?」

 《ボスモンスター・テイマー》のハザードだった。

 ハザードが、口を開く。そこから流れ出た言葉は、想像を絶するものだった。

「……兄さんを、邪魔させはしない」

「え……兄、さん……?」

 コハクの口から、驚愕の色に染まった声が出る。ほかのプレイヤーたちも驚きを隠せないようだ。

 ただ一人、茅場のみが無表情。

「……馬鹿な……だって……ハザードの……秋也の本名は……!」
 
 セモンが口走る。リアルネームを出していることなど、気にすることができない。

 それにハザードが答える。

「……京崎(きょうさき)は母方の名字さ。俺の本名は、茅場(かやば)秋也(あきや)――――知らなかったっけ?セモン……いや。清文」
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